ある宿場のはずれを、ひとりのみすぼらしい男が歩いております。 空んなった『黒伊佐錦』の一升瓶を杖替わりに、 さて、どこに行くのか、なにが目的なのか、 |
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2001.01.18 by 牛母沢 燗 | |||||||||||||
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農民がひく荷車の荷台に乗った牛。真っ赤な顔で気分が悪そうに揺られている。
座頭牛「うっぷ・・・。また飲んでもぉーた(~Q~;)」 宿場町のとある屋敷の前。荷車が止まり、牛降りる。 農民「着きましたよ。ここですよ」 牛が暖簾を分けて屋敷の中に入って行こうとすると、後から若い衆が、 三下A「おい、お前、何の用でぇ?(-"-)」 ◇ ◇ ◇ 三下に連れられて、奧へと案内される牛。奧は大勢の三下たちが寝起きする大部屋。 中庭に咲いた花の、甘い匂いが牛の鼻に漂ってくる。 座頭牛「ん〜〜〜〜〜ん。よか香りばい・・・」 牛、ふと鼻を、三下たちが酒をくみ交わす大部屋へと向ける。怪訝な表情。 座頭牛「う。なんにも匂わねぇなぁ。無味無臭ってやつだな・・・(~Q~;)」 それを聞いた三下たち、いきり立って、 三下B「おぅおぅおぅ、なんだとぉ! 無味無臭とは何事だっ!(-"-)」 牛、わざとサイコロ博打に話向きを変えて、 座頭牛「すみませんが、よかったらあっしにも胴を取らせてもらえませんかね」 牛、壷を握る。いかにも手元が心もとない。 座頭牛「入ります!」 賽を壷に入れ振りかぶって畳の上に。が、サイコロが壷からこぼれる。目は二三の“甲”。 座頭牛「ささ、はってくださいよ! ね!」 三下たちは薄ら笑いを浮かべている。 三下C「甲だ!」 牛、壷を開ける。 座頭牛「さ、目は・・・・?」 がっぽりと銭を持って行かれる牛、諦めると思いきや、もう一度、 座頭牛「すみませんがね、まだまだコマは持ってますよ! もう一勝負行きましょう」 牛、袂から“切り餅”を出す。それにつられて三下たちの目がギラリと輝く。 三下たち「おお!やろうやろう!」 賽を壷に入れ振りかぶって畳の上に。またもサイコロが壷からこぼれる。目は三四の“甲”。 三下G「へへへ。甲だっ!」 と牛、突然壷からこぼれた賽を取り上げて袂に入れる。あっけにとられる三下たち。 三下たち「おっ・・・(@@;)」 壷を開く牛、賽の目は五一の“乙” 座頭牛「え?・・・・賽の目は?・・・・賽の目はどうなってます?」 ニヤニヤした表情で盆に拡がった銭をかき集める牛。むっとした三下たちが詰め寄る、 三下B「おい!こりゃぁ、いかさまじゃねぇか!(-"-)」 黙って聞いていた牛、すっくと仁王立ちになって、 座頭牛「四の五の言うんじゃねぇや、カバ野郎! だいたい壷からこぼれた賽の目にコマはるトンチキがどこの世界にいるってんで? なにかい、お前らはこぼれた賽の目にはったってのか? だいたい“甲”はともかく、“乙”は一滴たりともこぼすわきゃねえんだ、俺はな!・・・はぁ、こんな三下ばかりじゃぁ、親分の器量も知れたもんだな。あほらしくなった、邪魔したなっ。」 銭を抱えて廊下を玄関に向かって去っていく牛に、怒った三下たち、 三下F「あの野郎、叩っ斬ってやる!!!(-"-)」 脇差を握った三下たちが、一斉に裏へ先回り。表で待ち伏せしようと追いかける。玄関まで来た時に、 寶川親分「おぅ!お前達、いったいどこへ行こうってんだ?」 と、そこへ暖簾をわけて玄関から牛が出てくる。ばったりと出会って、 寶川「お?もしかしたら牛さんじゃねぇか? おお、やっぱり牛さんだ」 ◇ ◇ ◇ 牛が寶川一家に草鞋を脱いだその夜、兄弟分「共輪の助五郎」がやって来て宴が始まる。 共輪「な、兄貴ぃ。関八州の本格焼酎のシマだが、うちも入れてくれねぇか?」 麦六に呼ばれた牛、座敷に入ってくる。三下たちが回りを囲んでいる。 座頭牛「親分、なんの御用で?」 ・ |
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一同「おおお!(@_@;)」 三下G「す、凄ぇっ!!(@_@;)」 三下B「いったい、いつの間に・・・(@_@;)」 三下F「中身が無くなってる!(@_@;)」 三下E「いつ飲んだってんだ?(@_@;)」 共輪「て、てぇしたもんだ!牛さん!」 寶川「さすがだな」 座頭牛「あたしゃ“盗み飲みの牛”って呼ばれてる位でしてね。隠れ酒、盗み酒だけが取り柄のしがない野郎でございます。他人様の酒にまで手ぇ出して、顰蹙買っておりやす」 寶川「いやぁ〜、大した技だ!(・・・これで出入りは勝てる!)」 共輪「さっきから気になって気になって、しょうがねぇんだが。それにしても、牛さん。お目の方は達者なようだが、なぜ焼酎座頭と自称してるんでぇ?」 ◇ ◇ ◇ 寶川が新しく売り出すという薩摩芋焼酎を子分たちが試飲し始める。大部屋の時とは打って変わった風情、 三下G「少々サラリした粉体のような苦味があります」 三下S「なに言ってんでぇ?アフターはなめらかだって言ってんじゃぁねぇか!(-"-)」 やおら牛が立ち上がって、 座頭牛「ガタガタ言ってんじゃねぇや!おぅ! お、俺たちゃ・なっ。お天道様の下、大衆の表街道を行く渡世なん・だ・ぞっ。いいかぁ、言わば、元は関東の鼻つまみもんだぁ。それが、いまじゃスノッブ御用達。いつか別のものを見つけられりゃぁ、余所に行っちまわれるってぇ運命だっ。ペダンチックな小理屈並べて内輪もめしてる場合じゃぁねぇっ!」 ♪およしなぁ〜さいよぉ〜 三下たち「もっ、タダじゃおかねぇ!(-"-)」 牛、あっけなく袋叩きにされて、 |
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