2001.04.14 雑誌『無礼ぼうい』掲載 インタビュワー オックス・ヘイリー

マル飲ムX・・・彼は、関東圏の嗜好に迎合せんがため“漂白化”に陥った本格焼酎の再生、原点への回帰を求める焼酎教団『Nation Of Shochu』の若き指導者である。

『NOS』は、本格焼酎圏としての九州の独立、本格焼酎に課せられた酒類差別の撤廃、甲類に対して混和ではなく分離を主張。“漂白化”した焼酎を“アンクル・トりす”として断罪するなど、その過激な本格焼酎の主張は、非暴力的混和を唱える他の焼酎運動家から非難されたりと、いま話題と注目を集めている。

さて本格焼酎の“公飲権”運動が全国的に高まる中、マイナリティ集団といえる本格焼酎愛飲界の新たな台風の目となったマル飲ムX。今回その彼に、本誌は独占インタビューを行うことに成功した。


──ミニスター・マル飲ム、まずあなたが所属する教団『NOS』が求めるものとはどういうものでしょうか。

:まず、本格焼酎に対する自由、平等、正義です。教祖偉インジャ師は、自分自身を知れ、本格焼酎としての自己を肯定せよ、と説いている。そしてWhiteリカーPeopleの間違った先入観・優越感による本格焼酎への賤視や誤飲を是正することです。

──「本格焼酎としての自己を肯定せよ」とはどういうことなのでしょう?

:本格焼酎はこれまで、絶えず自己否定を強いられてきた、そういう歴史を歩まされてきたということです。臭いだの、貧乏酒だの。本格焼酎が本格焼酎であることを自ら否定的に思うことはない。逆に誇りに思うべきである、と偉インジャ師は我々に教え指し示したのです。

──あたなの姓である“X”とは、どういう意味なんでしょうか?

:本格焼酎には父祖伝来の香り・味がありました。WhiteリカーPeopleなら「クセがある。臭う」とでも言うのでしょう。しかし、それは今、WhiteリカーPeopleへの融合という大義名分のためにほとんどが漂白化され、永遠に失われてしまう事態となっています。本来の香り・味わい、これをX、つまり未知数として姓にしているのです。

──Xはいつかは取り戻されると?

:そうです。Xを取り戻すために我々は活動しています。

──WhiteリカーPeopleや、またWhisky Peopleに対して暴力をもってしても酒界変革を行うと宣言して物議を醸していますね。あえて酒種闘争を激化させるのではないかと。真意はどうなんでしょうか。暴力を肯定するのですか?

:まず、その“乙類”という呼び方自体に込められた酒種差別意識が問題だと言っているのです。九州の地より同朋たちがWhiteリカーPeopleによって拉致されて以来、我々のアイデンティティは日に日に失われています。ところで、もしあなたの娘さんが蛇に噛まれたとして、あなたはその蛇を放っておきますか? やはりその蛇を打ち据えるでしょう? 漂白色革命の暴力に徹底的に抵抗するのは当然の権利なのです。

──拉致とおっしゃいますが、関東圏への“移出”に積極的に協力した本格焼酎たちもいっぱいいたわけでしょう?

:それはおっしゃるとおりです。手を貸す者もいるのは確かです。我々は彼らを「アンクル・トりす」と呼んでいます。彼らはWhiteリカーPeopleに憧れ、自らの香りや味を漂白してしまう。whisky Peopleにすり寄りColored Shochuになって融和してしまおうとする。吟醸香を纏ってSake People気取りの者もいますね。たとえば我々の同志が彼らに「味が変わったじゃないか」と指摘すると、「気のせいですよ(^_^;)」などと誤魔化したりする。嘆かわしい事です。

──Colored Shochuの存在も完全に否定してしまうのですか?

:完全に否定はしません。たとえば日本人を例える言葉で“バナナ”というのがありますよね。皮は黄色いが中味は白いと。逆にColoredであっても、本格焼酎のネイティブさを内面に堅持しているのであれば、ブラザーとして握手をすることもあるのです。

──酒種融和ということで言えば、これらの動きは一歩前進である、という見方もありますが。

:前進どころか、“民族的土着的特性”という観点から言えば、本当は後退なのです。それはつまり、WhiteリカーPeopleに対する劣等感がそうさせるのですよ。私自身も若い頃は漂白化の道に染まっていました。私は偉インジャ師の教えに出会うことで、WhiteリカーPeopleの魔の手から逃れることができました。

──若い頃はどのような生活を?

:某洋酒や甲類メーカーの小綺麗なボトルに入った焼酎に飲まれていました。本当に何も解っていなかった。クリアだから美しい、ピュアだから美しい、逆にクセを持つことは汚い、だから本格焼酎は汚い。そんなWhiteリカーPeopleのためにあるクリアリスト教のピュアリタニズム的洗脳に染まっていたのです。本格焼酎であるが故の本来の美しさ、というものに気付いていなかったのです。

──あなたもその道に染まったことがあると・・・。しかし全ての悪を、WhiteリカーPeopleやクリアリスト教に帰するのはいかがかと思うのですが。

:私は若い頃にWhiteリカーPeopleの悪をすべて見たのです。一般には善良、良識を備えていると尊敬される人々が、レモン・スライスを放り込んだり、梅干しをねじ込んだり、ウーロン茶を混ぜたりしているのを見てきました。我々は、本格焼酎本来のまっとうな生き方に導きたいのです。

──マルサン・ウーサー・チコイイ牧師などが唱えている非暴力主義を非難されていますね。協調するのは困難なのでしょうか。

:彼が主張している非暴力主義とは、WhiteリカーPeopleへの迎合であって、その一員に連なりたいということなのです。WhiteリカーPeopleは進んで彼をかっています。なぜならチコイイは、彼らにとって穏健で“臭わない”からです。

──先日テレビのWhiteリカーPeopleたちが出演したある番組で、“ビンテージ焼酎”などとプレミアム系焼酎が紹介されたそうですが、それについてはどうお考えです?

:欺瞞だ。本格焼酎はWine Peopleではない。彼らがあえて他の酒種の表現を持ち込むのは、理解しようとしないからです。理解があるような顔をしているが、真に対峙する時が来ると、レモンや梅干しを押し込むようなリンチを加えたりする。自らの了解範囲内に取り込もうとしているが、手を結ぼうとは決してしません。そして彼らは、彼らなりの“善意”の対象を見つければ、そちらにすぐ移ってしまうでしょう。

──酒種の融合、あなたの言葉を借りるなら「酒種的迎合」が発生するその根本には何があるのでしょうか。

:経済的問題です。それこそが本格焼酎のネイティブさ、独立性を消失させている根本的原因です。そしてその消失が招くこととは、「味覚の全国統一」「中央集権的味覚の確立」なのです。
いまWhiteリカーPeopleにとっての本格焼酎とは、漂白化された香りと味に希少性が加わって受け入れられており、スノッブ的に彼らの味覚文化を活性化させているのです。しかしそれに迎合して酒種的存立基盤を見失ってしまうなら、味覚の平準化を生みだし、いつかは忘れ去られてしまう。
経済的問題の解決とは民族的土着的特性を堅持しながら経済的にも自尊自営できることであり、それが本格焼酎という酒種にとって必要なことなのです。我々は本格焼酎が本来持つ魅力を、ひとりでも多くの方に伝えることで自尊自営を応援したいと願っているわけです。

──ミニスター・マル飲ム、では最後に何か一言。

:本格焼酎 Is Beautiful。

マル飲ムXはこのインタビューから2年後、上野アメ横での演説中、差し向けられた暗殺者によりチューハイを一気に2升飲まされ、急性アルコール中毒でこの世を去った。

その前年、彼は本格焼酎の聖地・薩摩巡礼の旅に赴き、当地で皆が酒種を超えて一献傾ける姿に触れて大きな思想的転換、成長を見せた。しかし、それは暗殺により大きなムーブメントとして具現化はせず、そのテーマは次の時代と世代へと持ち越されたのである。


(本稿はフィクションであり、実在する団体、個人、商品とは一切関係ありません。またマルコムX師を揶揄中傷するものではありません)


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