2002.02.18 採集者 福岡市 猛牛

むかし昔、九州の南のあるところに、蔵元を営む貧しい男がおりました。

仕込みも一段落した四月のはじめ。男はぬぅあんとか自分の蔵の焼酎がカバ売れするようにと、意を決して京都にある松尾様に行き、お籠もりをして願をかけました。

「松尾様ぁ〜。どうかうちの焼酎がどんどん売れて、銭がわんさと入り、蔵をキレイにして、蒸留機も替えて、新社屋なんてのも建てたりとか・・・、え〜と、ついでに息子も高等学問所に入れますよう学資も御願いいたしますだぁ。どうか、どうかワタシをお助け下さいましぃ〜m(_ _)m」

と祈り続けて九十九日目の明け方のことです。松尾様が夢枕に立ったのです。

松尾様「男よ、よ〜九十九日もがんばったもんじゃ。ちと要求が過大じゃが、大目に見ようぞ。お前が奉納してくれた焼酎を一本だけお前に返そう。その焼酎を、社を出て最初に出会った者に、譲るがよいぞぉ〜」

男ははっと目覚めると、本殿に奉納した焼酎『魔尾蔵』を一本引っこ抜き、御神域を後にしました。

◇    ◇    ◇

歩いていると向こうから酒屋がやって来ました。酒屋は男が手にしている焼酎を目に留めると、声を掛けてきました。

酒屋「すみませんが、手にしたその焼酎、ひとつ私に譲ってはくれませぬか?」
 「いや、これは簡単には渡せねぇなぁ。安焼酎とは訳が違うんだよ」

男は強気でなかなか焼酎を渡しません。でも、それで簡単に収まる様な酒屋ではありませんでした。生活が掛かっていたのです。それこそ蔵元に通った九十九回目の朝に、男は根負けしました。

酒屋「譲っていただけるとは、ありがとうございます。では1980文で?」
 「お宅なら信用できますな。1980文で結構ですよ。取引させてもらいましょ」

◇    ◇    ◇

その酒屋がやっと店頭に『魔尾蔵』を並べた数日後のこと。一人の客がぶらりと入ってきました。棚に並んでいた『魔尾蔵』に目が止まりました。客はなにげない表情で瓶をつかむとレジまで来ました。

客 「これ、ください。」
酒屋「いや、それは売れないなぁ・・・」
客 「そうですか、だめですか」
酒屋「いやぁ〜、実はこの焼酎はね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

客は、この焼酎を手に入れた酒屋の苦労談に二刻も付き合わされました。九十九回目のその苦労談を聞き終えた客は、やっと『魔尾蔵』を手に入れるが出来ました。でも、『魔尾蔵』と得体の知れない焼酎2本の抱き合わせで、9980文で買わせられる羽目になりました。

客は、すぐさま侘び事務所に戻り、手紙をしたためると、エレキ電送装置に手紙を差し込んでボタンを押して送信を始めました。

釣書「幻の焼酎、ついに入荷!貴店の差別化に最適!これが最後のチャンス!15000文!」

◇    ◇    ◇

酒屋リストの頭から九十九軒目のディス屋が、その釣書電文を受け取って、すぐさま注文しました。数日後には『魔尾蔵』が店に届きました。ディス屋はすぐ値札を作って店頭に並べました。

値札「幻!希少!こだわりの逸品!『魔尾蔵』 一般価格22000文、講員価格19800文」

◇    ◇    ◇

毎度ディス屋で箱の麦酒を買っていた飲兵衛が、棚に『魔尾蔵』を見つけました。おもわず目が血走ってしまいました。あの有名な『魔尾蔵』が目の前にあるのですから。

財布と睨めっこしならが、買うか買うまいか、悩んでいました。でも九十九回目に店を訪れたとき、また出会う機会はないだろうと、思い切って買うことにしました。一文でも安くするためにディス屋の講にも入りました。

飲兵衛「やった!やっと手に入れたぁ!\(^0^)/」

いそいそと侘び住まいにもどった飲兵衛は、すぐさま電脳箱を立ち上げ、“弥浮おーくしょん”を開くとじぶんの『魔尾蔵』を登録しました。最低落札価格は強気の設定です。

最低落札価格「26000文」

◇    ◇    ◇

“弥浮おーくしょん”を覗いていた居酒屋の大将が、なかなか売れないで九十九周目を迎えていた飲兵衛の『魔尾蔵』を見つけました。しかし欲張りな飲兵衛は、仲間に声を掛けてサクラで入札してもらったりとか、方々に手をつくして、懲りずに値をつり上げていました。

大将「35000文か・・・。高すぎる。でも、一本でも並べておけば箔がつくわなぁ。店のイメージアップには安い投資か・・・」

小刻みな激しい競りの結果、大将は45000文でやっとこさ落札できました。大将はそれを店の棚に並べました。“地焼酎”の品書きに麗々しく一筆を加えました。

品書き「『魔尾蔵』 幻の垂涎のこだわりの超希少の桶蒸留焼酎 一杯 3000文」

◇    ◇    ◇

ある日その居酒屋に、こだわり焼酎党が彼女とやってきました。『魔尾蔵』が置いてあるという噂を聞きつけてやってきたのです。さっそく『魔尾蔵』のお湯割りを注文しました。なぜか球磨焼酎のガラに入って出てきた『魔尾蔵』のお湯割りは、燗の付けすぎでした。

焼酎党「あっち!!ほぉ〜、熱い(@_@;)。でも、この熱さ加減がいいんだよ。ん、良い香りだ。極めて上品な風味だよね。芋焼酎とは思えないもん。よく出来てるよね。・・・済みませんが、割り水はなんで割っているんですか?」
大将「はい、うちは純水で割っております」

焼酎党「さすが!こだわりの店は違うなぁ〜」

焼酎党とその彼女は『魔尾蔵』を15杯飲んで、大将はすぐさまモトは取りました。

焼酎党「これで一杯3000文は安いよ!」

◇    ◇    ◇

松尾様の御神威のおかげか・・・・、

蔵元の男は、造る端から焼酎がカバ売れして大儲け、蔵も大きく増築しました。息子は帝都農業高等学問所醸造学科を無事卒業して跡継ぎとなり、その後も大きく栄えました。

酒屋は、蔵元の特約店として酒販業界や飲兵衛たちに権勢を誇る存在となり、業界のご意見番として全国から客が訪れるくらいの有名な店となり大繁盛しました。

は、最も値入れが取れる酒流通界の闇のフィクサーとして幅を利かし、利ざやで儲けた銭で「焼酎御殿」を建てました。

ディス屋は、安売り商品のマイナスをプレミアム焼酎でがっぽり補って、お釣りが帰ってきました。いまでは全国展開のナンバー1酒販チェーンへと成長しました。

飲兵衛は、おーくしょんの儲けでさらにプレミアム焼酎を買い、またおーくしょんに出品するというサイクルで稼ぎに稼いで、少ない給料を豊かにリカバーして天寿を全うしました。

居酒屋の大将は、焼酎品揃え全国一の店のオーナーとして雑誌や新聞の記事になったりと、すっかり有名人になりました。店は、毎日参拝客が押すな押すなの大盛況。儲けた銭でオーストラリアに別荘を買ったり、愛人を囲ったりと、我が世の春を謳歌しました。

焼酎党は?

「俺は『魔尾蔵』を飲んだのだどっ!(-.-)y-゜゜゜」という満足感だけが残りました。

焼酎党以外の人々は、「これは松尾様のおかげ」と感謝して、その恩を忘れずに暮らしました。『魔尾蔵』は、その後“わらしべ焼酎”と呼ばれるようになった、

とさ。


「めでたし、めでたしぃ」
「ねぇ、おかあさん、みんなはお金持ちになったのに、どうして焼酎党のおじちゃんだけは満足しただけでおわるの?」
「あなたが大人になったら、わかりますよ。もう寝ますよ^^」
「ねぇ、どうして? ねぇ教えて? ねぇねぇ!どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?・・・・・」
「ふぁ〜(~Q~;)」

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