2001.03.26 by 猛牛

♪僕のぉ この店でぇ 君のお目当てぇ 見つけたらぁん
 安くぅ 買えるからぁ 僕のん お店においでぇ


・・・ぬぅあんて甘ったるく、宮内崇宣氏はお歌いにはならなかったのだっ。

『平成酒販侠客伝』の第2回は、筑前は粕屋郡宇美町にある「笑中や」さんこと、宮内商店さんと、気骨ある若大将・宮内崇宣氏のレポートをお届けしたい。

粕屋郡宇美町は、筑前国際空港から少し下った東側、山に囲まれたのどかな町である。正直なところ、筑前の中心部からは「遠かねぇ〜(-ー;」というイメージのある場所。実際、「笑中や」さんのHPに記載された地図を頼りにお店を目指したのだが、宇美町内で道に迷い、到着まで1時間ほど費やしてしまった。

事前にメールでアポを取ったのだが、午後2時からは配達に出ますとのことで、午前11時までにはお邪魔しようと早めに天神を出発。10時半には宇美町内に乗り込んだが、迷いに迷って途中で根負け。

某コンビニに飛び込んで、店員のおばさんにプリントアウトした地図を見せた。目的地である宮内商店の名前を出すと、途端に「ああ!宮内さんはよく配達に廻ってるよねぇ」と、ズバリ道順を御教示いただいたのである。

わてはその後この件で「うむ・・・、なるほど」と妙に感心したのだが、その理由は後でお話しよう。

■酒販店経営哲学が横溢する、店頭装飾群。

やっとこさたどり着いたのだが、所在地はなんと宇美町の中心街からさらに奥の奥、後背地の山が迫った、周囲にほとんど何も無い辺鄙な場所だった。しかし、店頭を見て感心した。

店頭にはこの宮内商店さんの販売精神を象徴するような文言が、どハデな看板となって掲示されていたのだ。

「酒とロマンを語る店」
「・・・よか焼酎が揃うとうや」
「清酒は日本の文化です。くれぐれもテレビコマーシャルにまどわされることなく本物の日本酒をお選びください」

最後の文句など、「本格焼酎は日本の文化です。くれぐれもプレミアムにまどわされることなく本物の焼酎をお選びください」と言い換えてもよかろう。実際にお話を伺うと、宮内商店さんはまさにその通りの経営方針を貫かれていらっしゃったのである。

■25歳の若大将、気骨の宮内崇宣氏。

お会いできたのは宮内商店の二代目となる若大将の宮内崇宣氏(以下、若大将)で、あのHPを管理もされている。改めてご本人を前にすると、想像していたよりも若い方だったので、わてはびっくらした。
猛牛:「失礼ですけんども、おいくつでらっしゃいます?」
若大将:「え〜と、25歳です」
猛牛:「そりゃ、お若いですにゃ〜。家業に携わって何年位になられるとですか?」
若大将:「3年ほどになります。18歳の時に関東の酒屋さんで4年修行して、それから戻ってきまして3年というところでしょうか」

猛牛:「HP拝見しましたら、色々な蔵元さんに行かれたそうで。でも、森伊蔵さんのところは記憶がないと言われてましたですにゃ。それはどうして?」
若大将:「実は、家業に戻って最初にお邪魔したのが森伊蔵さんだったんですよ。だからアガっちゃって^^;」
猛牛:「なるほど^^」
若大将:「親父に案内して貰って、ま、顔つなぎしてくれたと言いますか、ね」
猛牛:「こうやって店内拝見してて、凄い品揃えですにゃ。ほんと涎が出ますばい。正直、宇美よりも天神に店出してくれんですか? 毎日通いますばい(爆)」
若大将:「いえ、逆に出したくないんですよ(笑)」
猛牛:「おろ。それはまたどうして?」
若大将:「こういう商品って、そんなにたくさん入荷する訳じゃないでしょう? 数が少ないために、それだけ売れても店は成り立たないんです。俗にプレミアム系と呼ばれる商品だけで、うちは飯食えるわけじゃないんですよ。ビールも売るし、定番的な日本酒や焼酎も販売しないと経営は成り立ちませんからね」

猛牛:「HPには『純黒』で芋焼酎への開眼を果たされたとありましたが、ここまでこだわった品揃えというのは、やはり店の差別化が最大の目的なんでしょう?」
若大将:「もちろんそれはありますが、蔵元さんの顔が見える、造った人の顔が見える、中味のしっかりした商品をお客さまにお届けしたいというのが一番の理由ですね」
猛牛:「なるほど」
若大将:「実際に蔵元さんにお会いして商品を納入してもらってますが。まず蔵元さんの人柄に惚れ込んで、あのおいちゃんが造ってくれた焼酎か、ならぜひ売りたい、という思い入れっていうんですか」
猛牛:「蔵元さんとの心のつながりですばいね」
若大将:「それに、もちろん味ですね。自分が味わって、これならお客さまに自信持っておすすめできる味だと。こっちもちゃんと誠意を持って販売したいんですよ」

猛牛:「もう充実の品揃えですけんど、地元である宇美での評価はどげんですか?」
若大将:「それが、灯台もと暗し、でして(笑)」
猛牛:「それはもったいないですにゃ(^_^;)。でも地元で売れたら、わての分がなくなりますけん、地元が気付かん方がええかも(爆)」
若大将:「はい、それでもいいと思ってます。本当に焼酎のことが大好きで、本当に愛してくれる方が買っていただければ、それで充分なんですよ。入荷する量だって潤沢にあるわけじゃない。だから大声あげてアピールしたり、市街に店を出す気もないんです」
猛牛:「プレミアムで変に儲けようちスケベ心は持ってらっしゃらないってことですにゃ。さすがですばい」

地図を見てもなかなかお店の場所が解らなかったことを、先に書いた。実は、店への誘導という事で言えば、地元のコンビニ店員のおばさんでさえ「この地図は大雑把すぎて、わからんばい」という反応で、正直なところ不親切な作りではある。

しかし、わてはそれでいいと思った。お客も焼酎への愛情があれば、1日かけてでも宮内商店さんを探しだすくらい、屁でもないはずである。プレミアムに踊らされる消費者はもちろん、業者が客面して店に買いに来るご時世、これは良い意味で“客への試金石”であるとわては受け取った。

■若大将、プレミアム焼酎ブームをかく語りき。

次に価格とプレミアム・ブームについて、お話を伺ってみた。

猛牛:「それにしても、適正な価格ですばいね。ほんと一消費者としてこげん嬉しいことは無かです。若大将が扱ってらっしゃる『村尾』なんて、某ディスなんかやったら12800円ですけんねぇ」
若大将:「わぁ!信じられないですね! なんて値段付けてるんだろう・・・」
猛牛:「適正価格での販売についてのお考えは、どうなんですかい?」
若大将:「そういう銘柄を昔から買っていただいたお客さまに、品薄になったので高い値段で売りますなんて、相手を馬鹿にしたような商売はできません。それにプレミアムを上乗せしたところでもともと入荷する本数が少ないですから、大した商売にもならないんですね。お客さまからいただいている信用を守るのを第一にしてます」

猛牛:「転売目的で買うような同業者も、店には来るとでしょう?」
若大将:「そうですねぇ(苦笑)。だいたい店に入って来たときにピンと来るんですよ」
猛牛:「なるほど、蛇の道はヘビ、ってところですにゃ(笑)」
若大将:「何度かお引き取りいただきました(^_^;) ま、お客さまかブローカーか、判断するのは難しいですし、お客さまを疑ってはいけないんですけど。でもプレミアムを付けて転売されるのは、焼酎ファンの方にも蔵元さんにも失礼な話だと思ってますんで」

猛牛:「プレミアム焼酎ブームを、どげな風に見ておられますかい?」
若大将:「ちょっと関東は過熱し過ぎだと思いますね」
猛牛:「そうでしょうね。でも筑前も同じ様な雰囲気ですばい」
若大将:「どうせ、また別のものを見つければ、ブームはすぐそっちに移るでしょう。でも、これをキッカケに本当に焼酎に惚れ込んでくれる方が増えたらいいなと思います」
猛牛:「薩摩の蔵元さんでも若い世代の方は、関東への進出に熱心みたいですけんども」
若大将:「確かに関東は市場がお化けサイズ、ですからね。九州とは違いますよね」

■一般焼酎に対する気持ちで、意気投合。

その後、若大将の一般焼酎に対する思いへと、話は展開した。

若大将:「そう言えば、あの『森伊蔵』でさえ、7〜8年前は店先にいっぱい積んで試飲して貰ってたんですけどねぇ^^;」
猛牛:「ふぁ〜〜( ̄▽ ̄) そりゃ信じられんですばい」
若大将:「ところで牛さんが一般焼酎のことをHPに書いていたでしょ?」
猛牛:「はい。一般焼酎のどこが悪いってですにゃ(#^^#)。ご拝読ありがとうございます」
若大将:「ほんとにそうなんですよ。稀少だから美味いとか、プレミアムが付いているから美味い、ということじゃないですよね。もちろん嗜好品ですから、個人で味の感想は違うわけですし。少量しか造ってないから美味いとは限らないのになぁ・・・」
猛牛:「そうですばいねぇ」

若大将:「一般焼酎だから、不味いわけではもちろん無いわけで。失礼ながら、そこがなにか履き違いされていると思いますね」
猛牛:「その通りですにゃ」
若大将:「量販品、少量生産品に限らず、お客さまが自分の好みの味を見つけていただければ一番だと思うのですが。どうしてもイメージに引っ張られてしまうんでしょう」
猛牛:「うむ」
若大将:「焼酎は、やっぱり庶民の日常生活酒ですよ。身近な価格で買っていただいて愛飲して欲しいですし、また一般焼酎でも美味いものが多いんですから、見直して欲しいですね。プレミアム焼酎ばかりに目が行くのは、なんとも淋しい限りです」

猛牛:「カメ壷仕込みも、今はなんかトレンドみたいになってますけんども」
若大将:「そうですね。カメ壷仕込みだから必ずしも全てが美味いとは決めつけられないんですけど。銘柄ごとに味わいは違うし。」
猛牛:「同感ですばい」
若大将:「単純にカメ壷が人気だからと、大手メーカーまでカメ壷仕込みの商品を出し始めて、中小の蔵元さんは戸惑ってらっしゃるみたいですよ」
猛牛:「ほぉ・・・」
若大将:「元々、カメ壷でしか造っていなかったところは、それぞれのご事情があってカメ壷で造られていた訳ですね。蔵元さんからすると、こっちはいろんな事情で手間の掛かるカメ壷仕込みでやってるというのに、人気が出たからって大工場を持ってる大手メーカーまで同じような商品を出し始めるとはなぁ・・・という訳なんですね」
猛牛:「逆転現象ですにゃ。とても興味深い話ですばい」

若大将:「それに、樽貯蔵も個人的にはどうかな?と思ってます」
猛牛:「わても色物はど〜も苦手なんですわ」
若大将:「ウイスキーと変わらないっていうか・・・」
猛牛:「それですたい。ウィスキーファンを誘引するにはいいかも知れんですけどね」
若大将:「確かに。でも本道ではないという感じです」
猛牛:「そうそう。色物はどうも違和感がありますばい」

若大将:「余談ですけど、うちでは品揃えの考えとして、別の銘柄で置き換えられるような品は置かないようにしてます」
猛牛:「と、申しますと?」
若大将:「簡単に言うと、他と比較して個性の際だっていないもの、別の銘柄で代替がきくような味のものは置かないことにしてるんですね」
猛牛:「なるほど、それは厳しい。商品の個性がしっかりしてないと、宮内商店さんの棚に入れないと・・・。これは蔵元さんも、うかうかしてられませんにゃ(^_^;)」

■すんごいメーカー販促品が鎮座していた店内( ̄▽ ̄;;

というわけで、さらにお話を伺いたかったのだが、なにぶん時間はもう昼の12時。お食事の邪魔をするわけにはいかないので、失礼することに。

最後に、一本なにを戴こうかと店内をじっくり見回すと・・・。な、なんとディスプレイコーナーに、まさに稀少の極みとも言うべきメーカーグッズが鎮座ましましているではないか!

まず目に飛び込んだのが岩倉酒造さんの『月の中銘入り・ジョカ』。大ぶりなジョカに猪口が5つ付いたものである。ん〜〜〜ん。メーカー販促グッズに目がない猛牛、思わず息を呑んだ。なんともいい味が出ている品である・・・。

「おろ・・・。すんまっしぇんばってん、これ幾らですかぁ〜?」という見え透いた問いに加え、深くm(_ _)mし、おまけに雲竜型で四股まで踏んでズズズーーと迫ったのだが、「ああぁ〜、済みません。これは酒販店にだけ呉れるもので、売り物じゃないんですよ(#^_^#)」と、若大将がピシャリ。おーまいがっ!!

ぐっと涙を飲んだ猛牛の姿を見て、若大将が「そういえば、こういうのもありますよ(ニヤリ)」と言ってレジの下から取り出されたのが、ぬぅあんと『森伊蔵銘入り・前垂れ』。これも素晴らしいじょ!!!

焼酎自体にはあまり興味は無いが、この前垂れは、わてにとってまさに幻の垂涎のアイテムなのだ。これを着けて、「まいど!杜伊蔵でやんす!」と叫びながら天神を走り回ってみたいもんである。ええわぁ、この前垂れ! ほんと欲しいぃぃぃぃ(T_T)。

12時過ぎ、若大将が芋焼酎にハマるきっかけとなったという、おすすめの『純黒』を購入して、宮内商店さんを失礼することにした。

お話を伺ったのは正味30分程度だったのだが、25歳という若さながら本格焼酎に対する情熱と酒販への確固たる信念を持った若大将の人柄に触れることが出来て、大満足。実にさわやかな気持ちでしたばい。

筑前市内から少々遠隔地にありながらも、誠実な経営方針でファンに本格焼酎をお届けいただいている宮内商店さんと若大将に、とても感銘を受けました。これからもご活躍を祈っております!

(セリフ)
しあわせだにゃ〜
牛は宮内商店に居るときが 一番しあわせなんだぁ
牛は肝臓が悪くなるまで 宮内商店をはなさないぞぉ
・・・・いいだろぉ

■『宮内商店』さんのご紹介

住 所:福岡県粕屋郡宇美町大字宇美1713-6
担当者:宮内 崇宣氏
TEL :092-932-0892
FAX :092-933-1475

豊富な品揃えと適正な価格は下記HPでご実感ください。

http://www.interq.or.jp/kyuushu/shou

九州焼酎探検隊TOP