開設/2002.11.05 更新/2003.05.10 怪説/愕芸員 猛牛

酒類購買・販売のパフォーマンスにおける
心情的美の対象物としての粗品タオル

明治期に英国より導入されたタオルは、綿製の柔らかな質感が好評を博して、本邦にも急速に普及した。もちろん高級品も存在したが、一般庶民にとって日常的に活用されていたのは、酒販店や米穀店などから進呈された「粗品タオル」であった。

「粗品タオル」が担うオブジェとしての意味は何か?

たとえば酒販店において、購買主体者が酒類を購入し、販売主体者との間に価値の交換というパフォーマンスが発生した場合、その頻度が高まったり購入量が一時的急増を示した場合、販売主体者に「お得意様」という高次の心情が発生する(ことが多々ある)。

主体者間に新たな意味性が生じた時、「ほんの気持ちですばってん」という情念をオブジェ化し、主体者相互の精神的疎通を媒介する役割を持ったものが、パフォーマンスとして手渡しされる「粗品タオル」だったと言えよう。

「粗品タオル」とは焼酎のリアリズムのリネン的別形態である。

風呂のお供、雪隠の手拭き、卓袱台の布巾、擦り切れれば雑巾・・・。使用の初期から終末までの状態の変化はもちろん、外装、素材感、意匠に漂うcheapな感覚にこそ、大衆の焼酎(および酒類)愛飲生活をリネンという形態を通じてレアルに体現している逸品と信じて止まない。

「粗品タオル」は、装飾主義的、または呪物崇拝的タオルの利用が大勢を占める昨今の家庭環境において、相対的にその地位の低下が顕著であろう。かつ携帯ストラップなどの新たなオブジェの台頭によってその存在感がさらに希薄化している状況でもある。

しかし、ここに「粗品タオル」の収集、展示することによって、リネンという形態によって表現された焼酎リアリズムを視覚的に体感していただき、多少なりともその存在意義に気づいていただけるならば、幸甚である。

(なお展示については、「梱包日用芸術」としての観点から基本的に包装のままの展示とした。つまり貧乏症)

壱岐焼酎協業組合タオル(未使用)
同原田酒造分(未使用)
同組合原田氏より寄贈いただいた協業組合としてのタオル。これは組合としてのもので、他に加入した6社毎のタオルがある。 これはそのひとつ。原田氏のご実家の原田酒造(有)の銘が入ったもの。7タイプ共通で「壱岐っ娘」「心意気」の銘が入る。
園の露タオル(未使用)
小野富酒造タオル(未使用)
園の露さんは、一切ネームが入っていない驚きの白タオル。しかし、そこがいかにも自然体の蔵元さんらしい。マスト! いでさんより当美術館に寄贈。『天下無敵』で有名な大分県は小野富酒造さんのタオル。外袋に印刷された模様が特徴的だ。
萬年タオル(未使用)
萬年タオル(未使用・開封)
渡邊酒造場さんのまさにコレクターズアイテムともいうべき逸品。昭和40年代のものらしい。熨斗は紙製で古色が素晴らしい。 盃に萬年という古いロゴマークが染め抜かれている。電話の局番も一桁。渡邊さんもよく残っていたと驚きの美麗古品である。
万年タオル(未使用/表)
万年タオル(未使用/裏)
麦焼酎のロゴがあしらわれた渡邊酒造場さんの粗品。ビニール袋にプリントされた正統派の意匠、トラッドスタイルである。→ →とはいえ、社長曰く「最近はタオルも喜ばれなくなって…」。この品がプレミアムアイテム化する日も近いかもしれない。
小鹿タオル(未使用)
伊佐錦タオル(使用1年)
芋焼酎「小鹿」タオル。goida隊員が鹿児島滞在時に入手、筑前近代焼酎日用美術館へと寄贈。独得の熨斗風装飾が素晴らしい。 01年某屋外イベント時に入手。現在、筑前近代焼酎日用美術館内にて、管理人の体や汗を拭いたりと実務に携わっている。
繊月タオル(未使用)
馬場酒店タオル(未使用)
02年10月に筑前での屋外催事にて同社製品を購入時に収集。外装も作品名入りでトータルなアートとしての完成度は高い。 02年7月、唐津市におけるデッドストックの大量購入で馬場酒店さんより入手。トラディッショナルな意匠の正統派作品。
九州焼酎探検隊TOP