2003.11.25 by 牛ディマジオ

■正調粕取主義者の巣窟、博多中洲『まりりんBAR』にて・・・。

それは先週のことであった。いまや筑前の正調粕取主義者も集まる焼酎バーとなった『まりりんBAR』。そこでわてはひとり、誰もいない店内で『秘伝梅酒用 古式蒸留純粕焼酎 常陸山』を直燗で啜っていた。「ZZZZZZZZZZZZ.........Z!」。

福田啓次マスター「最近、よく出るよ、これは」
猛牛「旨いですばい、ほんとに・・・。生の燗、甘い! 納得っす(ごくっ)」

と、そこにやって来たのは、同じく正調粕取主義者の一翼を担うカネゴン隊員春の試験蒸留に続いて、夏の再試験蒸留を行った佐賀県唐津市の鳴滝酒造さん『ヤマフル』について、3人でひとしきり談義をやっていた。

最近、正調粕取焼酎が店でよく出るようになったという福田マスター。以前からすこしく正調粕取には関心があったのだが、いよいよ積極的に正調を紹介する体制を取りたいというのである。そこで、突然カネゴン隊員が叫んだ。

カネ「マスター! いっそ鳴滝さんにお邪魔しましょうよ!」

正調粕取については、いまだに不干渉・無関心の“粕取モンロー主義”が、ほとんどの業務店・酒販店、そして飲兵衛に堅く“信奉”されている状況にある。しかし、ついに「まりりんBAR」は、“粕取モンロー主義”との決別を宣言するに至ったのだっ!

■「お厚い粕取がお好き!」・・・唐津へと走る。

11月23日、午後2時過ぎ。JR筑肥線に乗った3人は唐津駅に到着。

目的は、鳴滝酒造・古舘正典専務との面談、そして正調粕取『ヤマフル』の再蒸留版の発売時期の確認である。古舘さんには、休日でしかもお子さまのご行事出席という多忙な時にも関わらず、蔵に御出座いただいた。深謝です。

11月23日、唐津市の鳴滝酒造で会談する古舘専務と福田マスター。
まずは蔵の説明ということで、パンフレットをいただいて目を通す。

今年は、福岡および全国鑑評会でも『聚楽太閤・大吟醸』が大賞を受賞した鳴滝酒造さん。その表彰状を含めた壁に掛けられた“額”の数にカネさんが目を剥く。

カネ「す・・すごい数ですねぇ(@_@;)」

清酒の世界で、超有名な優良蔵の同社だ。

そして、焼酎好きの我々が目を奪われているのは、これである。正調粕取焼酎『ヤマフル』

吟醸酒ブームの後に生まれた“吟醸粕もろみ取り”=新粕取ではなく、江戸時代以来の古式床しい伝統的製法で生まれるが故に“正調(字義は「伝統的な」)と称するのである。

今年の春と夏における試験的再蒸留を経て、いよいよ来年3月から17年振りの復活!、正式な蒸留再開が決定したのは嬉しい話だった。

古式に則った製法で新しい時代にその魅力を発散する「お厚い味わいの粕取焼酎」・・・『ヤマフル』。今回の訪問で、春蒸留分以降の25度で採用される“顔”が初めて公開された。左画像である。35度はこれまでのラベルを踏襲する。

■夏蒸留分も文句無しの大傑作! マスター&カネさん、絶句!

今回の訪問では、春蒸留分の「低濾過25度」、夏蒸留分の「40度」を試飲させていただいた。春分については以前飲ませていただいたが、夏は初めて。期待にノドが鳴るのだ!

まず春25度。度数が相対的に低いとはいえ、深みと甘さが凄い。焼酎バーとして10年以上中洲で番を張ってきた福田マスターが、「25度といっても、凄いね。旨いよ」と目を輝かせた。その煌めきにハズレはない。ほんと、いい味なのよねん(T_T)

次は夏40度だ。わても初体験なので楽しみ。さっそく一口・・・。

いやはや、蒸留して半年も経っていないというのに、滑らかでかつ後口の甘さは、もう文句無しに「大傑作!」と申し上げて過言ではない。甘味が口の中でグワングワン!と共鳴するかのようだ。わて自身も目ん玉が飛び出た(@_@;)

マスター「これが40度?ってくらいに、スムーズに入るね。この・・・この甘さが凄いよ!これはいい!。うちに置いたら、すぐに無くなるね」
カネ「・・・ほんと、旨いっす。後味の甘さにはビックリですわ」
マスター「古舘さん、これ、いつから売り出すんですか!!!」
古舘「はい・・・私からすると、まだ荒い感じがするんですよ。やはりもう少し寝かせてからですね・・・」
三人「そ・・・そうですかぁ・・・・・・・・」

わてらの思い入れと、蔵元さんが考える最終的酒質とはまた別である。しかし福田マスターがいつ発売なのかを熱心に確認するほどに、この『ヤマフル』は今すぐに出しておかしくはないくらい、完成されている。素晴らしいとしか、言いようがない!

蒸留やその後の手入れにすごく手間が掛かり、それに比例してコストも重なる正調粕取の復活。清酒(普通酒)の需要が落ち、しかも原料となる普通酒粕を奈良漬け製造などに回せば高く売れる状況では、正調粕取向けの原料や製造量の確保が難しい。これは正調粕取の大きな課題となっているのである。

そういうご事情を重々承知しながらも、この素晴らしい作品が、焼酎ファンの目の前に登場する日が遠からずやってくることを祈るばかりだ。

■『ヤマフル』・・・夏の試験蒸留の原酒を拝む(-人-)

さて、次はこの『ヤマフル』の蒸留器を見学させていただいた。わては以前拝見したが、福田マスターとカネさんは初めてである。

お二人がとても興味深く見ているのが解る。古舘さんも懇切丁寧に解説する。頭が下がる。

古舘さんが蔵に戻られる前は、東京で学校の先生をされていたことは以前書いた。

今月、地元紙の『佐賀新聞』、「新時代に挑む若手企業人」という連載記事に古舘さんが登場された。その中で“自閉症児も普通学級で学ぶ中学校で教諭を4年務めた”という紹介があったんである。こういうご対応を拝見していると、古舘さんのこれまでの生活歴やポリシーが解るような気がする。とても誠実で前向きなのだ。

清酒の世界で頂点を極められた鳴滝酒造さんにして、これである。

余談だが、先々週ある店で飲んだ際、そこの主人がわてに言った。

「聞いた話だけどさぁ。“どこぞの県のある島の蔵元”は、取材に来た記者に『麹? 麹は麹屋に聞け。蒸留? 蒸留屋に聞け』なんて言ってたらしいね。ほんと、なに考えてんだ?」

“満へぇ!”となったその主人とわて。しかしそういう思い入れを差し引いても、『ヤマフル』、素晴らしい粕取焼酎だと断言する。

というわけで、夏蒸留分の『ヤマフル』が貯蔵されたタンクを拝見する。シートを開けた途端に、香りが周囲に広がる。撮影のために数メートル離れたわての鼻孔にも芳香が飛び込んできた。ん〜〜〜〜〜〜ん、エエ匂いだなや。

ほんと・・・はやく飲みたい(T_T)

■今回さらに、清酒関係のラインをグググッと拝見。

さて、これまでご紹介した様に、鳴滝酒造さんは清酒の世界において誉れの蔵だ。前回お邪魔した時には拝見出来なかった、清酒の稼働中の製造工程を覗かせていただいた。

原料面でいくと、鳴滝酒造さんでは精米も自社で行っていることが特筆される。もちろん他の蔵元さんにもされているところはあるが、吟醸のみならず普通酒においても、精米を他人任せにしていないのは、珍しいという。

この施設の規模は、カネゴン隊員もびっくりしていた。本格的なのである。わても米卸関係の仕事をしたことがあるので解るばってん、地域の大手精米所ぐらいの規模を誇る。
左上画像は麹、そして右は一次もろみ(もと)を貯蔵しているタンク。麹をたべさせていただいた。

古舘「焼酎の麹と違って、食べてみると解りますが、酸味が少ないんですよ」

実際に口に含むと、ほのかな甘味があって美味いんだにゃ〜、これが。

次に一次もろみだが、とても白くて美しい。クリームかヨーグルトのような感じだ。

以前お邪魔した時に、宮崎は『萬年』の渡邊専務が感心していた、ドでかい二次もろみのタンク群。ほんと、広いですばい。

さすがに桶で造る時代ではなくなったが、いかにタンクで造ろうとも、美味いものは美味いのだ。当たり前である。

焼酎で言えば、木桶蒸留や甕仕込み、甕貯蔵だから良い・・・という信仰は、ひとまず置くべきだ、という気がするったいねぇ。

■さらにさらに、初めて焼酎蔵を覗かせていただく・・・。

前回の訪問では拝見できなかった、もろみ取りの米焼酎や麦焼酎の蔵をご案内いただいた。ありがたかったです。

下記は、河内式の自動製麹装置。焼酎専業蔵ではないので、若干小ぶりなタイプ。これから唐津の地焼酎となっている米焼酎『からつくんち』、さらに地元からの要望で発売なった麦焼酎『一望千里』が生まれる。

蒸留器は、常圧・減圧・微減圧それぞれに対応できる仕様となっている。出来具合は、古舘さんも大変満足しているそうだ。わて知っている範囲、減圧蒸留器のみを設置している例が多い北部九州の清酒蔵さんにあって、珍しい存在だと言えよう。
北部九州、特に福岡県南部や佐賀県は、宮崎の『ひむかのくろうま』が極めて強い勢力をもつエリアである。

減圧系の麦焼酎が北部九州の農村部にどれだけ浸透したかは、わても佐賀県の広範囲な酒販店探索で実感している。

しかし、伝統に回帰しながらも、いまだからこそ新たな魅力として受け入れられる“反撃”が、ここから始まっている。

■新生『ヤマフル』は、なにかと我々を誘発する!

カネさんが、その日の夜にわて宛に感想をメールで送ってくださった。下記に、原文そのままに転載させていただく。

カネです。
牛さん、今日はお疲れさまでした。

やっぱりどう考えても「ヤマフル新酒」製品化すべきですね。
あれは粕取焼酎の顔になる偉大なもんやと素人ながらにどえらい感じました。
あのあとマスターも
「あれが商品になれば相当うちでは出るっちゃろうけどなぁ。」
と言っとりました。

おっしゃる通りです!、という他はない。

次代の正調粕取としてのみならず、「佐賀県の本格焼酎を代表する顔」となる存在だとわては僭越ながら申し上げたい。


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