2002.09.16 by けんじ

銘柄
度数
原料
原産
九州菊
25度
酒粕
福岡県京都郡犀川町崎山992
林酒造場
製品的特徴
捕獲者
評者
レッドブック度
猛牛
けんじ
現存
■評者雑感

●当該銘柄について

「しかしこれからは粕取(※1)も段々発展するでしょう」
と三四郎が空元気を出して反駁すると。
「亡びるね」
と、男は澄ましていった。三四郎はおどろいた。

粕取まぼろし探偵団(※2)でこんなことを口に出せば、すぐ殴られる。わるくすると国賊扱いにされる・・・・・・

これは夏目漱石著「三四郎」の有名な一節である(嘘。本当は※1=日本 ※2=熊本・・・ですね)。

こんな一節もあります。

「囚われちゃ駄目だ。いくら日本の事を思ったって贔屓の引き倒しになるばかりだ」

このご時世、色々考えさせられる言葉ではあります。

日本も焼酎への愛情も、思い入れと共に、己を上空からみつめる冷静さを保持したいものです。自戒を込めて。

長い前説はやめて(爆)

◇   ◇   ◇

さて、何故冒頭に夏目漱石の「三四郎」か?

「三四郎」は今回取り上げる『九州菊』の故郷、犀川町(と思われる※)生まれである。

その犀川町は、福岡県京都郡にある人口1万人たらずの静かな農山村だ。同町へは、日豊本線行橋駅から、第三セクター「平成筑豊鉄道・田川線」(旧国鉄田川線)で行くのがとても面白い。昔は筑豊の石炭や石灰石を、豊前海の港、苅田港から積み出すための路線だったようだ。

現在、行橋、京築地区から筑豊方面に向かうメインロードは、勝山から福岡までぶち抜く国道201号。平成筑豊鉄道は表街道を外れた、鄙びた風景を行く地味な路線。それ故に素朴な田園風景が広がる心癒される路線である。

『九州菊』のある崎山地区は、平成筑豊鉄道沿い(駅はなし)犀川町を横断する今川沿いに広がる筑豊・赤村に隣接する集落である。ちなみに赤村は西川峰子の故郷としても知られている(爆)。

この素朴な山里、崎山郷に天保七年創業した清酒蔵が林酒造。主銘柄は『九州菊』である。

大吟醸は福岡糸島産の山田錦を使用しているが、その他の純米酒、本醸造、普通酒は全て地元犀川産の米を使用する、地酒中の地酒である。最近はアイガモ農法の無農薬米を使用した特別純米酒や、女性向けに商品化された純米吟醸『セニョリータ』(爆)を発売するなど意欲的な蔵である。

さて、この素朴な三四郎の里、犀川・崎山郷でも、里人用に粕取焼酎を醸しているという。この地の粕取は、如何に・・・?

※三四郎は京都郡真崎村生まれという設定。実際にこのような地名はないが、漱石の一番弟子といえる小宮豊隆の出身地が京都郡犀川町であるため、三四郎の里と町側も売り出している。(参考・『山里の酒』葦書房など)

●ボトルデザイン:
一見、地味である。

マジマジと見つめてる(by あやや)。やはり地味だ(爆)。その理由は色と思われる。昔の巨人のユニフォーム(ホーム)のようなやや黄色みがかった白色を基調に、ややもやがかかったような色と、グレーが入った、淡い水色が組み合わさっている。この地味な配色にあるのではないか。

地味な配色の中で「酒王 九州菊」という赤地、白抜き文字が勇ましい。その他異彩を放っているのは、「純良」という文字がメインラベルに抜き出されている事か。蔵元が強調したい事はここにあるのだろう。

全体的に地味な印象は否めないが、「純良」が強調されているように実質重視という事か。

●香り:
第一波は、粕取独特の焦げ臭がつーんと鼻に来る。しかし、その焦げ臭は淡く、快いものである。第二波は、純米酒のような重みのある米の香りと、清酒が気化したような良い臭いである。

臭いからすると「正調」粕取焼酎ではないようだ。

しかし粕取独特の香りと、清酒の一般受けする香り、その二つが相まって実に複雑な香りが立ち上り、瓶から鼻を離させない(爆)。

●味わい:
生で飲む。独特のヌメリが第一波、純米酒のようなヘビーな風味が第二波。後口は爽やかな味がたなびく。香りと同じ二段ロケットのようなスタートである。味わって正調粕取ではなく、もろみ取りの粕取ではないかと想像する。

この酒をお湯割りで飲んでみた。「正調」をお湯割りにしたら飲めたもんではないが(爆)この酒はボデイがあって、伸びがよく十分イケる。

ロックで飲んだ。やっぱり一般受けするのはこの飲み方か。純米酒の冷やを飲むような心地よさである。

お湯割りで飲める粕取焼酎は珍しい。ラベルもそうだが、地元ユーザーに即した、実質本位の“地の酒”である。

●レッドブック度:
林酒造場に電話で問い合わせてみた。

1)現在、麦、粕取焼酎を製造している。
2)地元に粕取ユーザーが少なからずいる。
3)粕取は、今のところ製造をやめるつもりはない。

この蔵の酒のように実質的なご返事を頂いた。

実質的な返事を受け、簡潔な結論に達した。

「『九州菊』は、地元の人が求め続ける限り、粕取は造り続ける」・・・・と。


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