2003.07.04 by goida

銘柄
度数
原料
原産
25度
表記無し
大分県玖珠郡玖珠町
亀の井酒造合資会社
製品的特徴
捕獲者
評者
レッドブック度
甘味が強く、大人しめ
goida
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消滅危惧類
■評者雑感

●当該銘柄について
大分県玖珠町は明治26年まで“森村”、昭和2年まで“森町”と言っていた。同町にある豊後森という駅名もこれに由来している。現在の玖珠町の姿となったのは、近隣の4町村が合併した昭和30年のことだ。

現在は“吉四六漬”をはじめ、蜂蜜や椎茸、柚子胡椒など山の暮らしを感じさせる素朴な味わいの特産品と童話の里として知られるようになった。警察署前やドライブインなど、アニメや特撮キャラのコンクリート製彩色像が立っているので、「なるほどね」と思うはずである。

町の中からは頂上が真っ平らな山容を見ることができる。これが“切株山”だ。影が四国の松山まで届くという、とんでもない大きさの楠を切り倒した跡が切株山と伝えられるのである。

楠が切り倒されることで、日田盆地、玖珠盆地とそこを流れる玖珠川が出来たり、倒れた楠の先端が“長崎”、落葉の跡が“博多”となったり・・・。他にも、楠が倒れて太陽の日が射したから“夜明”などという地名も生まれたとか。なんとスケールがでっかい昔話でしょう。

他にも「悲しい恋の結末」や「河童ばなし」など幾つかの昔話が伝承されている。

そして忘れてはならないのが大分県の和牛改良に大きな蹄跡を残した“糸福”号である。同町で昭和58年11月18日に生まれ。発育産肉性に富み、豊後牛の躍進の礎となった種雄牛である。多くの子孫を残し、平成14年1月31日に空の星となっている。

そんな玖珠盆地、万年山(はねやま)の麓で清酒を造る“亀の井酒造”は自社の麦焼酎に『童話の里』という銘柄を付けている。

創業は江戸享保年間。地元産の酒米「クジュウ」や酒造適合米「山田錦」、「レイホウ」を利用して手造りの清酒を世に出す蔵元である。商品ラインナップの中で、しみじみと地元民の喉を潤すのが、正調粕取焼酎『亀』である。

さっそく栓を開けてみようではないか!!

●ボトルデザイン:
 軟質プラ製の白い栓に目がいく。清酒蔵のにおいがプンプンと臭ってくるポイントである。

緑を基調としたラベルに、浮かび上がった髭文字大書きの“亀”という文字が強烈な個性を発しており、銘柄の由来は蔵元名に因んでいることが容易に想像できる。

その文字に寄り添うように「呼んだ?」と亀様の御姿が良いアクセント。

そういったものよりも目を引くのが、日本の黄金時代を思い起こさせる「焼酎」の古い書体。肩ラベルの「日本醇良焼酎」も泣かせるじゃぁないか!!

●香り:
どちらかというとパンチ力はない。近くの八鹿酒造の『鹿の子』と何処か共通する香りである。しかしながら、粕取り焼酎独特の個性は失っていない。

ある方に嗅がしたところ「醤油みたいな香りがする!!」と叫んだといったエピソードもあったりする。面白いですね。

●味わい:
土臭く、非常に甘味の強い焼酎である。そして大人しい。けんじ老師のような偏屈に『超』が付くようなお方であれば、物足りないと思われるだろうか。でも、私はこれで十分に美味しいと思うのです。

●レッドブック度:
豊後は土地勘が無く、仕方がないので蔵へ問い合わせてみることにした。清酒の原酒(19度)で梅酒を漬けるという興味深い話も聞けたが、優しい声で応対してくれるおばあちゃんの話を聞きながら段々と寂しい気持ちになっていく。

「地元では夏場なんかによく飲まれていましたよ。梅酒なんかもおいしかったですね。でも、段々飲んでくれる人が少なくなってね。酒粕も今はそのまま売った方がよく売れるのもあって、何年も造っていないんですよ。」

今店頭で並んでいるものは、15年ほど前に“酒粕にもみ殻を混ぜてせいろで蒸す”という伝統的な造り方で造られたものだったとか。大人しい味わいも、長い貯蔵によるものであろうか。度数は25度、おそらく1升のみ。残念ながら、今のところ再び蒸留を行う予定は無いと言うことである。

「また造ってくれんと?っていう声も多いとですけどねぇ・・・。すみません。」

聞けばタンクの中も残り少ないという。まさに過去となりつつある“消滅危惧類”の粕取であった(なお、ブランド名は麦焼酎『童話の里』の関東向けバージョン『亀』があるため、消滅にはならない)。

蔵元には、一粕取りファンとして、今後も製造の継続を期待したい。


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