2002.09.09 by けんじ

銘柄
度数
原料
原産
ひらど
25度
吟醸酒粕
長崎県平戸市志々伎町1475
福田酒造株式会社
製品的特徴
捕獲者
評者
レッドブック度
猛牛
けんじ
現存
■評者雑感

●当該銘柄について
九州は意外に広い。

九州は古来「西海道」と呼ばれて来た。しかし、筆者が居住している日向の地にいるとその呼称はいまいち実感が湧かないのである。四国の呼称「南海道」の方がしっくり来る。

同じ九州でも西の端、平戸島や天草に行って、「雲か山か呉か越か 水天髣髴晴一髪・・」と頼山陽が詠った西海の海岸に佇み、遥か彼方にあるはずの中国大陸へ沈む夕日を拝めば、九州=西海道が実感できるのである。

恥ずかしいモノローグはここでやめて(爆)

その西海を望む清酒蔵・福田酒造は、平戸島の南端志々木に1688年(元禄元年)に創業。平戸松浦藩の御用酒屋を代々務めた歴史を持つ、伝統ある蔵である。

清酒は、地元農家で契約栽培をした「山田錦」を純米から大吟に至るまでタップリと使用し、最近鑑評会でも好成績をあげているという。

みずみずしい大吟に比べ、純米酒は地元の嗜好にあわせてやや甘め。地元特産の「アゴ」(博多や長崎でダシとして使われるトビウオ干し)焼や、アオサ(海草)の味噌汁にピッタリ。

また焼酎も歴史があり、昭和32年から麦焼酎を樽に入れて貯蔵している。長期貯蔵焼酎の魁ともいえる逸品である。この貯蔵酒『カピタン』の香ばしい味は、松浦家御用達の伝統のお菓子「カスドース」(カステラに卵黄をつけて揚げ、さらにザラメをまぶした菓子。猛烈に甘い)にも合いそうだ。他には、じゃがいもで作った焼酎『じゃがたらお春』も知られている。

焼酎でも有名だが、本業は清酒。
麦焼酎を作り始めたのは戦後であるが、北部九州の他の清酒蔵と同じように、焼酎醸造の元々は我らが“粕取”である。

さて、この西海の粕取『ひらど』は、如何に・・・。

●ボトルデザイン:
全体的に白を基調にした爽やかなラベルである。今まで評してきた粕取焼酎のラベルは古典的なものが多かったため、毛色が違う。

左上に平戸市街に鎮座する「カトリック教会」と寺社が共存している写真を載せてエキゾチックなムードを醸し出している。右上には山の絵が。さりげなく蔵のある地域の象徴「志々伎山」を誇っていると思われる。

オランダと繋がりが深かった当地ゆえか、「三色旗」の色が首ラベルも含め全体のアクセントになっている。銘柄文字は細身書体のひらがなで「ひらど」と爽やかなイメージを壊さない配慮が。

首ラベルにはアルファベットの飾り文字がエキゾチックムードを加速させている。全体的に爽やかなラベルである。

●香り:
粕取特有のあの籾殻臭は全くない。

吟醸酒粕を使用したのか、吟醸香に近い爽やかな匂い。この蔵の純米酒にも似た、甘酒のようなあまやかな匂いも奥底から立ち上る。

全体的にクセがない香りだ。

●味わい:
香りは爽やか、味もひと口目は爽やかである。籾殻混ぜ蒸留ではないようだ。

飲んで行くと純米酒のような甘くて、やや重い風味も感じられる。清酒ほど多層的ではないが。カクテルベースにしても良さそうである。抵抗はまったくない。貯蔵期間の長さゆえか、舌への刺激もほとんどなくなめらかだ。

ロックにして飲んでみた。
爽やかな風味だけが浮き立つ。焼酎を初めて飲む人にはピッタリではないか。

吟醸香のような風味も過分に浮き立つ事もなく、全体的にニュートラルの風味が心地良い。粕取焼酎初手の方にオススメしたい。

●レッドブック度:
探検隊から粕取りについて蔵の方に問い合わせた所、専務より丁寧なメールを頂いた。焼酎にも力を入れている蔵とあって、その説明は細かく、参考になる。そのメールを纏めると。

1)いつから、粕取焼酎を作り始めたかはよく分かっていない。元禄元年より清酒の製造を始めているので、焼酎をはじめて造ったのは、粕取焼酎からだと想像している。米焼酎も歴史が古い。

2)出荷の時期は、夏の消費が多かった。田植えを終わり、疲れた体を癒すため飲んだようだ。焼酎を飲むと体が冷えるので、季節的には最適だったのだろう。

3)昭和30年代までは、夏は粕取焼酎を売り、冬は酒を売っていた。焼酎も砂糖を加えてお燗をして、冬でも飲んでいた人もいた。お湯割をするようになってから、冬の消費が多くなった

4)現在の生産量は、ごくわずか。出荷数量が、年々減少している。5年に1回ぐらい、しかも、1タンクだけ製造している。

5)根強い人気はあるのだが、宣伝もしていなくて、粕取焼酎の味を知る人が減っ ているのが現状である。しかし、最近になって問い合わせは増えている

6)昔の造り方そのままだから、改良する余地もあるであろう。 常圧の焼酎なので、貯蔵期間を長くすることや、小さい容器を取り入れることも考えている。

素晴らしいメールを頂いた。粕取焼酎の歴史から、現在の製造、出荷の現状まで間然とする所がない。福田専務ありがとうございます。

さて、粕取焼酎の消滅はなさそうだが、他の蔵と同様5年に1回という気の長くなるスパンでの製造を行っているようだ。3)は昭和40年代の『さつま白波』の影響がみてとれる。「焼酎」が夏の季語だった清酒圏をも襲った南九州からの白いタイフーンは相当な威力だったようだ。

希望が見て取れるのは5)の発言である。「最近になって問い合わせが増えている」と。最近の焼酎ブームの影響なのか、それとも若いカストリ同胞が他にいるのか(自爆)、良い傾向であることは間違いない。

ただ6)の「昔の作り方そのまま」は調査中である。この焼酎の風味は古典的な粕取焼酎とはかけ離れている。他の銘柄に「昔からの作り方」である籾殻混ぜ蒸留焼酎があるのか、昔から籾殻を使わない蒸留方法をしていたのか。情報を集めたい。

古くから焼酎にも力を入れている清酒蔵らしく、焼酎への偏見がなく、研究もされている。“西海のカストリ”はまだまだ健在である。


九州焼酎探検隊TOP