2001.02.20 by 猛牛

「垂涎」という言葉ほど、現在において最も原義から乖離し、摩耗しているものはないであろう。「幻の」とか「入手困難」なども同断、である。語り手が「垂涎」と口から放った瞬間から、言葉は対象物そのものの真の価値から離れ、受け手の心の中にある虚空を漂うのだ。

さて、今回は物の実質価値と「垂涎」という言葉が、見事に一体化している希有な事例である垂涎の名器、「本格焼酎の日」記念酒器をご紹介したい。

これらの器は、昨年11月3日に行われた『本格焼酎の日inおはら祭 IZUROドーム』で出品されていたものがだが、わては前回ご紹介した「お猪口」(タイトル写真右)しか確認していなかった。

浅はかであった。

しかし、地元蒐集家の方よりご連絡をいただき、今回これら 垂涎の名器群の全貌をご紹介できる運びとなった。感謝申し上げたい。

左はお湯割りカップ、下記はグラス。どちらも「本格焼酎の日」記念キャラクターが燦然と輝く美しい仕上がりを見せる。

このキャラクター、正式名称はまだ無いということだが、通称「本格焼酎くん」と呼ばれているというエピソードを蒐集家の方からご教示いただいた。

製造元は「錦江陶芸とんぼ苑」さん。お湯割りカップには薩摩焼の伝統にのっとって「白黒」2タイプが作成されたという。

お猪口の項でも述べたが、日本陶芸の伝統と現代美術の感覚が融合したこれら垂涎の名器は、本格焼酎のれーぞんでーとる確立を示した大いなる記念碑と言えよう。

美は、伝統を凌駕する異端こそがその次代を創るのである。

というわけで、この垂涎の名器群が登場したイベントそのものの勧進元は「鹿児島県酒造組合連合会」さんで、連合会さんのサイトで催事の模様はご覧いただけるであろう。

美の降臨、その現場に居合わすことができなかったことは、返す返すも痛恨の極みではあるが、これらの名器たちを眺めるだけでも、傷心は癒され昇華されていく。本格焼酎酒器に宿ったミューズの微笑、いや、ほろ酔いで頬ほんのり・・・に出逢えただけでも、感謝したい。


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