2001.01.27 by 猛牛

合評会の翌日、夕刻。KOO隊員よりわての職場へ至急電が入った。

隊長の個人的お知り合いである某焼酎メーカーの部長さんが、隊長の会社を訪問されたというのである。「いざ、天神!」と、わては合評会で登場した『漫遊記』と関東の同志の方よりお贈りいただいた『爆弾ハナタレ』を抱えて会社を飛び出し、隊長の職場へと向かったのだった。

正直に言おぉ。『爆弾ハナタレ』は、本当は来月の合評会でお披露目したかったのである。せっかく関東の同志の方にいただいた品、わてだけが飲んでどーする。みんなで飲むことこそ、隊の精神ぞ。飲んではならぬ牛心殿、飲んでは・な・ら・ぬ・の・だぁ〜〜〜!(お酒様は神様です)

しかし、しかしである、爆弾という名前に恐怖感を覚え、しかも中には高純度な透明の液体も入っているというではないか。もしや瓶を倒しでもしたら“爆発”するのではないか?、と気が気でなかったのだ。BOMB!

というわけで、わてがお邪魔したときは部長さんは急用でお帰りになった後だったのであるが、隊長、あげまき、KOO両隊員にわてを加えて“爆発物試飲班”を臨時に結成、『爆弾ハナタレ』の近接信管を取り外してみた・・・。


猛牛:これが関東の同志の方から、極秘裏に搬入してもろうた“爆弾”ですばい(ドキドキ)。

隊長:うむ。箱にしろ瓶にしろ、いいデザインだねぇ。

あげ:綺麗だねぇ、ほんと・・・。

KOO:選んでる素材といい、書体といい、デザインといい、よく考え抜かれてますね。

猛牛:ほんに上手いですわぁ・・・(と、包み紙を開く)。

KOO:ほぉ〜、キレイだ(と、瓶をまじまじと見つめる)。

隊長:黒木本店さんって、商品造りをよく解ってるなぁ〜。

あげ:この封だって、この材質だよ?(と、封緘紙を手にとって眺める)

KOO:紙質も、違うみたい。瓶だってなんか質の良い物をつかってるって感じがする。透明感が違うもん。ラベルの紙にしろ、載せる文字の書体にしても、選び方が上手い。

猛牛:『百年の孤独』も洗練されてますけんねぇ〜。

KOO:そうそう。似たようなのが一杯あるけど、コルクだって本物じゃなかったり、質感が違う。もし、バックにプランニング会社が付いていたとしたら、かなりハイレベルなところだろうね。

あげ:これも凄いねぇ。よく造ってる。

猛牛:上手いっすよ、ほんと。

隊長:よく計算されてるわ、確かに。

猛牛:では、行ってみますか(と、信管を抜く)。ふぉぉ〜! すごいセメダイン臭!! プラモ造ってる頃を想い出しますばい(^_^;) なんだかいい香り(自爆)

あげ:どれどれ・・・。ぐわぁ〜!って来るねぇ(~Q~;)。

隊長:ほぉ〜〜。凄い匂いだ。バニラの匂いってうかなぁ。

KOO:独特の匂い。なんかクラッとしそうだ(^_^;)

猛牛:お味はどげんですか?

あげ:かーーーーっ!強いぃ(~Q~;)

猛牛:うおっ!(*^0^*)

KOO:ふぁ〜、強いぃぃ(^_^;)

隊長:ん〜〜ん。初垂れ独特の味だね。

猛牛:・・・後味が甘いですにゃ〜、これ。わては好みですわぁ〜。

隊長:うん。喉を通る時は甘くなる。でも、腹に入った後、効いてくるんだよね、ハナタレはね。

猛牛:関東の同志の方は、「難解な酒」だとおっしゃっていましたが。

あげ:わぁ〜、私、度数が高いのはダメ。ちょっと・・・。

猛牛:チェイサーした方がええっちゃないですか?(と、隊長後ろの自販機でウーロン茶を購入しお渡しする)

KOO:ふだん飲むものではないかもしれないけど、面白い商品ですね。

隊長:確かに同志の方が言われるように、なんと評価していいか難しいけど、黒木さん、なかなか面白い商品を出すところだね。

※後日GEN隊員にも試飲をお願いした。「濃厚な割には、サラリと切れがいい。イモなのに、米のすがすがしさを感じる」(GEN隊員談)


■『悪党』としての、黒木本店の商品開発

というわけで、抜け駆け合評会は、製品の味そのものよりも「商品」についての感想が主流を占めたのだが、さて、ここからは猛牛の個人的意見である。

『ひるね蔵・酒亭』の人気コーナー『焼酎寸言』で秘剣名誉隊員も触れられている、しおりの中の文言が、わても気になったのである。それはしおりの左上に極めて小さい活字で刷り込まれているものだが、黒木本店さんの商品開発を考える上でも、最も重要な文言と言えまいか?

焼酎こそは日本古来の蒸留酒。酒の精の集結に他ならない。麹菌の放つ華やかな賑わいも、酵母菌の生み出す静かなエナジーもテクネーとしての蒸留という人的行為によって、一点に凝縮され、一滴の純粋な精神へと帰着されていく。
この精神は日常を超え、状況を超え、様々な異形との戦いを超越して、しかもなお純粋であり続けようとする。まさに狂気。悪党的思考の産物。されど恐れるなかれ。焼酎こそは研ぎすまされた、孤独の魂の妙薬であることに間違いはないのだから。
失礼ながらこの文章、ペダンティックな修辞に包まれた、正直いって“悪文”なのだが、これは『百年の孤独』や『野うさぎの走り』、そしてこの『爆弾ハナタレ』など、黒木本店さんの商品造りの全体コンセプトを現すもの、ではないかと思った。あえて最も小さい文字で書いているところも、同店の“美学”を妙に感じさせる。

この文章を書いた人は、多分、日本中世史研究の大家・網野善彦先生に影響を受けているのだろう。名著『異形の王権』『無縁・苦界・楽』『日本中世の非農業民と天皇』などで、それまで主流であった農業・農耕民中心の歴史の捉え方に、新しい光を与えた学者である。

特に後醍醐天皇の鎌倉幕府倒幕と南北朝の混乱期にスポットを当てた『異形の王権』では、密教僧、異形の徒、悪党と手を組み倒幕を画策する後醍醐天皇の、まさに“異形の王権”ぶりが活写されているのだが、閑話休題。

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文中の核心と思えるのは、『悪党的思考の産物』という箇所だ。

“悪党”とは、領主に反抗する小武士団のことを指したり、また印地や飛礫を打つ集団を表したりもする。網野善彦先生は“いたずらっこ”という表現をされているが、言い得て妙。既成の権威、規範に反する行為を行う小集団を意味すると言えるだろうか。

さて、後醍醐天皇が手を組んだ“悪党”の最大の人物が、あの楠木正成だ。彼は正規軍戦よりも、いまで言うゲリラ戦に長けた武将だった。出自も明かでなく、いかにも「悪党」の名にふさわしい。

わては黒木本店さんの商品の裏に、正規軍(大手メーカー)の裏をかく小集団ならではのゲリラ的手法による商品化、つまり“悪党的思考の産物”を感じた。既成の権威、規範を超えて正規軍と対決しよう、という商品造りである。

製品内容、ネーミング、瓶、パッケージ、・・・ひとつひとつが、都市圏における大手メーカー(正規軍)の総力戦に対抗するための、“本格焼酎・都市ゲリラ戦”を心得た意匠を纏っている。

最も現代的“正統性”を感じさせる洗練度の高いデザインで、しかも製品内容はこれまでの土着的本格焼酎の隙間を突くものになっている。その“悪党的思考”のレベルの高さは、同店の「商品」に追従した亜流の輩出がその証拠だ。

東京において、本格焼酎そのものが異形・異端から“正統”となりつつある現在の状況を、ある意味先導した黒木本店さん・・・なかなかの知恵者と言えましょうぞ。


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