萬年歳時記
展示台
【師走・参】
Seeds Of Love

2004.01.12 by 猛牛


田野町の『大根やぐら』に、数え切れないくらいの大根が干される頃、渡邊酒造場では、翌年の仕込みに向けた、種芋の保存が始まりました。焼酎の仕込みと平行しながらの、同時作業です。

原料用さつまいもの自家栽培を行っている『萬年』ならではの、光景ですね。

渡邊専務「まず、爺ちゃんが種芋を選別して、木箱に移し変えるんっすよ。種芋には、当然ですが、いい芋だけしか残しません。できるだけ掘り起こしたままの状態で貯蔵します。少しでも傷がついていると、そこから腐敗する可能性があるので、根もそのまま残します」

いま、二代目・一男さんが、根の付いた芋を手にしています。次の芋焼酎の仕込みが、この作業に懸かっているのです。一男さんも厳しい眼差しで芋を見つめています。

渡邊専務「貯蔵庫は、蔵から徒歩5分ほどっすか。ちょっと離れたところにあります。一見、単なる物置小屋にしか見えませんが(笑)。これでも、ちゃんと室温と湿度を管理できるようになっているんっすよ」

さて、この中は、どうなっているんでしょうか? 私も含めて、ご覧になっている皆さんも、種芋の貯蔵庫の中は見たことが無いのではないですか? ちょっと覗いてみましょう。

あ。木箱の中に、種芋がたくさん眠っています。本当に、土が付いたまま、ですね。

この芋たちが、来年また植えられて、平成16年度の『萬年』に生まれ変わるのです。

渡邊専務「うちの場合、貯蔵するにあたって、まず「キュアリング」を行ないます」

キュアリング? それって何なんですか?

渡邊専務「“キュアリング”とは、芋の表面をコーティングして腐敗しにくくする作業です。貯蔵庫に種芋を入れたあと5〜6日ほど室温を30〜32℃ぐらいまで上げます。

すると芋の表面がコルクのようになって腐敗しにくくなります。芋の品種によってはキュアリングすることによって腐敗しやすくなる物もあるんっすよ」

なるほど。そうやって保存するんですね!

渡邊専務「その後、芋を床出しするまで室温13〜15℃、湿度90%に保ちます。この貯蔵庫にはたいした設備はないので、室温を上げる為に電気ストーブをつけたり、湿度を保つ為にお湯を床に撒いたりして対応します。そのため、毎日、朝晩チェックしにいかなくてはいけません。これが結構大変です」

単に仕込みの時期だけでなく、四季を通じて農業と一体となった渡邊酒造場の焼酎造り、その姿が、この種芋に凝縮されているように思えるのです。

“農は、國の大本なり”

古くからあるこの言葉の意味を、改めて考えてしまいます。


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