萬年歳時記
【師走・四】
Project MM vol.1

2004.01.15 by 猛牛 取材協力:県農えひめさん


渡邊酒造場の主力商品は、芋焼酎の『萬年』。そして麦で造られた『万年』です。

今年は麦焼酎の分野で、渡邊専務の新たな挑戦が始まりました。それは“はだか麦”を使った新作の醸造です。題して“Project MM(万年麦)

ここでは、『県農えひめ』にいらっしゃるナベさんのご協力を得て、原料用麦の生育過程から、プロジェクトの全貌を追ってみましょう。

ここは愛媛県のある麦の産地です。

これは発芽の段階。プロジェクトに使われるのは、新品種の「四国裸98号」といいます。これは試験場での仮名称で、まだ正式な名前は決まっていません。

ナベさん「平成14年の11月に播種(種まき)した『四国裸98号』が12月に芽を出したところですね」

ナベさん「冬の間に、徐々に大きくなっていくんですよ」

ところで。三代目・友美さんがおっしゃるには、大正の頃、初代が愛媛から宮崎にやってきた際に、はだか麦の種子を一緒に持ってきたそうで、それを当地で栽培して焼酎にしたら美味かったというのです。

渡邊酒造場の父祖伝来の地であり、また、はだか麦の最大の産地でもある愛媛県から、原料を取り寄せて、このプロジェクトがスタートすることになりました。

ほら、だいぶ大きくなってきましたね。

ナベさん「この時期に暖冬で暖かすぎると草丈が伸びすぎてしまうんです。麦踏(注:踏んで根をしっかり張らせる作業)をして根を発達させることが、収穫量増につながるんです」

いまご覧いただいているのは、生育の初期段階だということです。
大きくなった麦に穂が出来ました。いよいよ開花の時期です。

ナベさん「平成15年4月の初めに、麦の花が咲きました。これです。

明け方、ほんの1〜2時間、殻が開いておしべとめしべが出てくるんです。短い時間に受粉を済ますと殻が閉じます。このあと、殻の中の胚は養分を蓄えて、さらに大きくなっていくんです」

だんだんと、穂が実ってきます。

ナベさん「4月下旬、初夏の太陽を浴びてでん粉を蓄えています。はだか麦の穂は小麦や大粒大麦と比べて短いところが特徴ですね」

実った穂に栄養が蓄えられ次第に黄金色になってきます。麦畑が黄金色に染まってきた頃を“麦秋”といいます。

いよいよ刈り取りを前にした、麦たちです。なんとも綺麗ですね。
収穫された麦です。粒ぞろいのきれいなものが、たくさん穫れました。

ところで、麦と言ってもいろんな種類があり、食用にされるものから、焼酎の原料用まで幅広くあります。どんなものがあるのか、そして今回使われるのはどういった麦なのか、ナベさんに伺ってみました。

ナベさん「萬年さんのプロジェクトで使われれるのは『はだか麦』です。はだか麦といっても『いったいどんな麦?』と思われるでしょう。そもそも麦焼酎とはどんな麦を使っているかご存じですか?

焼酎に使われる麦は一般に「大麦」と呼ばれています。しかし、大麦は3種類の麦の総称です。その3種類とは、

一つ目が六条小粒大麦(しょうりゅうおおむぎ)で、主に麦茶・押し麦(麦ご飯)の原料となります。1つの穂が上から見ると6つの列に分かれていて、粒はやや小さめです。

二つ目が二条大粒大麦(だいりゅうおおむぎ)。主にビール・焼酎の原料になります。1つの穂が上から見ると2つの列に分かれています。ビールの缶に描かれている穂がこれです。 粒はやや大きめですね。麦焼酎の原料は、ほとんどがこの大粒大麦です。

ほら。これが二条大麦の粒です。佐賀県産の『ニシノチカラ』というそうです。

ナベさん「三つ目が、今回使われる六条はだか麦です。

主に味噌・押し麦の原料として使われてきたんですけど、大粒大麦よりも甘みが強いんですね。それで、最近では焼酎原料として使う蔵が増えています。小粒大麦と同様にひとつの穂が上から見ると6つに分かれています。比べると、粒はやや小さめでしょう?」

下の画像が、はだか麦です。本当に小粒で、まん丸い感じですね。

ナベさん。ところで、どうして“はだか麦”というんですか?

ナベさん「はい。なぜ“はだか麦”と呼ばれるのかと言うと、収穫してふるいにかけると、殻が取れて中身が出てくるんです。すぐ“服”を脱いではだかになってしまうので“はだか麦”、と呼ばれるんですね。

大粒大麦の場合だと、米と同じように収穫したとき籾殻がついています。これを取るには精麦するしかありません。その違いなんですよ」

はだかになった麦ですが、そのまま原料として使われるわけではありません。清酒用の原料米と同じように“精白”の段階が待っています。次にその精麦工程を見てみましょう。


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