【長月・参】
Making of Black MANNEN 1

2003.09.08 by 猛牛


渡邊酒造場の焼酎造りは、9月1日、麹の作業から始まりました。

フォークリフトで運ばれるのは、酒米。洗われ、蒸され、種麹と混ぜ合わさって麹となります。麹造りに使われる米の総量は1600kg。この作業を芋焼酎の仕込みが終了する12月まで、繰り返していきます。

袋の口が開いて、米がいま、搬送機の取り込み口に流し込まれます。

米は、内側でバネが回転する大きなホースを通って、自動製麹機の中に入っていきます。白くてきれいな米が、薬のカプセルのような形をしたドラムの中に、うずたかく積もっていきます。

こちらでは専用の製麹機を使っています。大型のドラムの中で、米を洗ったり蒸したり、そして種付けまで、作業が一貫して行えるのです。

渡邊専務「造りについては、家族5人でやってますからね。省力化できるところはしないと追いつかないんっす。でも、こういう装置も高くてですね・・・」

米が、ドラムの中で平らに均されました。これから、米を洗う「洗米」、水に浸す「浸漬」、「蒸米」、「製麹」などの作業が、機械制御によって行われます。職人の勘で行われていたこれらの作業はまた重労働でもあり、蔵人の生活を改善する上でこれらの機械化が果たした役割は大きなものがありました。
水に浸した米から、余分な水を流します。「水切り」と言われる作業です。

それから蒸す工程へと進みます。水の保水状態、そしてこの「蒸し」の具合で、麹造りの善し悪しが決まります。

麹菌が、麹米の中までしっかりと繁殖するには、しっかり芯まで蒸す必要があるのです。

ほら・・・いまタンクの横にあるパイプから蒸気が噴き出していますね。

蒸しあげられた米です。このタンクの中で、麹菌の繁殖に適した温度まで冷まします。そして、いよいよ麹の種付けを行います。

渡邊専務「蒸されたばかりの米って、ほんといい香りなんっすよね。蒸しの状態を見るために、この米を手に取って揉んで口に含むんです。これが、旨いんっすよ」

『黒麹萬年』に使われている種麹は、鹿児島県の有名な河内源一郎商店製の『黒麹菌ゴールド』。河内源一郎商店は、焼酎用の麹の製造元として、乙類焼酎蔵の80%以上に種麹を供給しています。
中を覗いてみましょう。

黒麹というだけあって、本当に黒い胞子が米の表面いっぱいに広がっています。河内源一郎商店の創設者である故・河内源一郎さんが黒麹の変異体である白麹の株を分離するまで、南九州では黒麹で焼酎を造っていました。

渡邊専務「ゴールドは以前使っていた黒麹よりも、さらに真っ黒い、そんな気がしますね」
「種付け」の瞬間です。

目の前で見ていると、まるでココアの粉をミルクの上に撒いているような感じです。黒い霧のような種麹が、蒸米の上にぐんぐんと広がっていきます。

渡邊専「出麹のときは、ちゃんとマスクをしとかないと大変なことになるんっすよ。アレルギーを持ってる人だったら、咳き込んだり。黒麹しかない時代の蔵人さんは大変だったでしょうねぇ」

体が黒一色に覆われ、爪の先まで黒い粒子が染み込んだという、かつての蔵の現場。そんな過酷な労働環境を改善したのが、故・河内源一郎氏が昭和6年に黒麹から発見、分離培養した白麹だったのです。

しかし現在は黒麹仕込みの焼酎が人気を集めた結果、南九州でも黒麹での生産にシフトする蔵元さんが多くなりました。

種麹と混ぜ合わされてから、約42時間。

出来上がった麹が、ドラムから荷台に乗った大箱へと移されます。「出麹」です。

これからいよいよ「一次仕込み」の工程へと進みます。

清酒で言えば「もと(酉へんに元)」に当たる一次仕込み。

これは、清酒や焼酎を問わず、出来上がる酒の酒質を決める大きな関門です。

発酵は、麹と仕込み水だけでは出来ません。ここに酵母が登場します。

渡邊酒造場で使われているのは、「宮崎酵母」と呼ばれるもの。

渡邊専務「酵母は生きてるんっすよ。王冠の上に綿が詰まってるでしょ? 王冠に酵母が呼吸できるように、穴が空けてあるんです。で、振ったり、品温が上がると酵母が噴き出すんです。ほら、清酒の生酒で吹き零れることがありますけど、あれも酵母が生きているために起こるんですね」

渡邊専務「宮崎の焼酎なのだから、宮崎の原料を極力使いたいと思ってます。酵母もしかりです。そのほうが宮崎の焼酎だ!と誇れるような気がするんっすよ! もっと勉強して、いろんな事を試してみて、酵母を変えてみることもあるかもしれませんが、今のところは、昔から使い続けているこの宮崎酵母を使っていくつもりです。

あ! 一次タンクの仕込み水に酵母をぶっ込んでるのは、じいちゃんです(^_^;)。やらせろ!って言っても、なかなかさせてくれないんっすよ(>_<)」

仕込み水に使われるのは、蔵の敷地内にある井戸から汲み上げた地下水です。鰐塚山に降った雨が、長い年月の間に伏流水となって、田野町の地下を流れています。
祖父の一男さんと渡邊専務の叔父の木脇英人さんが、仕込み水に、出来上がった麹をいままさに投入する瞬間です。

いよいよ一次仕込みの始まりです。

鰐塚山からの寒風が吹きすさぶ12月初旬まで、芋焼酎の仕込みがこれからずっと続きます。蔵の繁忙期がついに口火を切りました。

さて、次は「一次仕込み」のもろみの発酵過程をご紹介しましょう。


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