【長月・伍】
The Harvest Time

2003.09.11 by 猛牛


(BGM:Neil Young「Heart of Gold」)

ここは渡邊酒造場さんが「二次仕込み」に使用する原料芋を栽培している畑です。自家栽培で原料芋を作っている蔵元は珍しい存在と言えるでしょう。

ほんとうに広いですね! 気持ちのいい景色です。今年は異常な長雨が続き、芋の生育も心配されていました。でも、なんとか収穫にこぎ着けることができました。

渡邊専務「雨が降り続くと、日照が足りないので、葉っぱだけ大きくなって、芋が太らないんっすよ。ほんとどうしようかって悩みましたけど、持ちこたえてくれました(^_^)」

近づいてみると、芋の葉がけっこう虫に食われています。

渡邊専務「うちは薬を使わないので、葉をイモムシに食べられていて、ちょっと情けない姿になってしまいますね。年によっては茎だけになることもあるんっすよ。まあ、すぐに新しい葉が出るのでそこまで影響はないんですが、葉がない間は芋が太りませんからねぇ」

虫に葉を食べられるということは、それだけ自然ということの証でしょうか。

芋の収穫が近づくと、作業がやりやすいように、葉や蔓は刈り取られます。そして、茂っていた葉の奧から、芋が埋まっている畝(うね)が姿を現します。

この蔓を刈り取るのが、専用の蔓刈り機です。機械があるので楽、かと思ったら・・・、

渡邊専務「はじめにこの機械を通してツルを刈るんです。でも、機械で刈っただけではなかなかビニールが剥げないので、鎌で茎の根元を切ります。やっぱり手でしないといけないことは残ってるんですが、この作業は結構腰にくるんっすよ!(^_^;)」

渡邊専務の叔父さんが、鎌を手に茎を切って回っています。見るからに大変そう。

蔓を刈った後は、畝に張られたビニールシートを取り除く作業が待っています。

いま畑の向こうで作業をしているのは、祖父の一男さん。80歳という年齢にも係わらず、一男さんは黙々と手早くシートを剥いでいきます。今日もムッとする暑さの中で、その手を休めることがありません。

ところで、この広い芋畑についての想い出を、当主友美さんの弟で、現在は福岡県にお住まいの鶴田辰也さんが語ってくれました。

鶴田さん「芋の世話でいちばん辛いのが、夏の雑草取りなんですよ。畑が広いでしょう? 畝の長さが100mくらいあるんです。とにかくもう暑い上に、長くて広い。

で、父や叔父らといっしょに雑草を抜くんですが・・・。たとえば私が抜きはじめて畝の真ん中あたりに来ると、父たちはもうその畝の端まで行ってる。私が畝の端にやっとたどり着いたら、父たちはもうふたつ目の畝が終わっている。で、私が何列か畝の草を抜いて向こうを見たら、もう父たちは遠くに行ってるんですよぉ。ほんとに抜くのが速かったなぁ〜」

鶴田さん「ところが、やっと一面が終わったと思った時は、最初に抜いた畝からは、また雑草が芽を出してるんです。もう、ほんと無限地獄みたいに大変な作業でしてね(-ー;」

この畝から芋を掘り出すのが、芋掘り機です。2トントラックに載せられたその機械は、意外と大きなものでした。さあ! いまから芋掘りに出動っ!

渡邊専務「芋掘り機を、トラックの荷台に積んだり降ろしたりするのって、けっこう怖いんすよ。もぉ〜、落ちてきたら“痛い!”じゃすみませんからねぇ。ちょっと神経使いながらやってます」
春から夏にかけて、丹誠込めて栽培された原料芋が、今日やっと収穫の日を迎えました。芋掘り機が無かった昔は、この作業も大変だったのでしょうね。
渡邊専務「ここは蔵の裏にある畑なんです。畑はいろんな所に点在してるんっすよ。今日は父の姉夫婦が手伝いに来てくれました」
収穫物が集められました。中を覗くと、穫れたての新鮮なサツマイモがたくさん入っています。これは焼酎の原料に使われる「黄金千貫」という品種なのだそうです。
さて、渡邊専務。今年の芋の出来は、いかがですか?

渡邊専務「はい。例年から比べると、ちょっと小さめですが、なかなかいい芋です(^_^)v」

今日の畑での作業が終わりました。雨が多く低気温だった今年の夏は、ひと月遅れで陽射しが戻ってきたよう。畑は猛烈な暑さで、作業も大変。でも、若干小ぶりながらも、焼酎の仕込みには申し分のない「黄金千貫」が収穫できたようです。

蔵に戻って見ると、渡邊専務の叔母さまが着用された前垂れが土にまみれて、置かれていました。叔母さまの持ち物だそうです。

原料も、家族で栽培し、家族で収穫して仕込みに使う・・・“家族で造る”という蔵の姿勢を象徴しているように見えました。

収穫された「黄金千貫」は、これから原料として加工されます。次ぎはその工程を見てみましょう。

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