ふたりが並んだ写真
【霜月・壱】
With A Little Help My Friend

2003.11.12 by 猛牛


(BGM:Carol King 「You've Got A Friend」)

千葉県で行われた萬年ファンの集いに参加した二人、渡邊専務の母校の後輩たちが、10月31日、東京から宮崎県田野町に「実地研修」に訪れました。

はるばるやって来たのは、江上裕士君と小倉健太郎君。大学の醸造学科に籍を置く彼らは、将来焼酎蔵で蔵人になることを目指しています。江上君は千葉県出身で20歳、小倉君は神奈川県出身の21歳。これからの醸造界を背負っていくであろう若き人材です。

渡邊専務「今年のことですが、彼らが夏休みを利用して焼酎蔵を回っていたんっすよ。その時に、偶然うちを訪ねてきてくれたんです。それであの飲み会で再会して話を聞いていると、やる気まんまんって感じで。それで、父とも相談して、蔵に手伝いに来てもらうことにしたんです」

いま、江上君がやっているのは「芋切り」です。長年この作業にたずさわる渡邊真利子さんでさえ、体にこたえるという、この芋切り。初めてチャレンジした感想は、いかがですか?

江上君「次から次へと芋洗い機で洗われた芋がベルトコンベアで目の前を通り過ぎていくんですけど、すべての芋をチェックして、大きい芋はちゃんと蒸かされるように小さく切り、傷んでいる部分は取り除かなければならないので、ものすごいスピードを要する作業なんです。

まな板を使わないため、芋は持ちにくいし、なかなか一発でスパッと切れなかったりと、初めは相当苦労しました。少し指も切ってしまいましたし…。でも、毎日やるため徐々に慣れて、うまく切れるようになりましたし、傷んでいる芋も臭いで嗅ぎ分ける事ができるようになりました。

芋切りは、しっかりやらないと味にもろに影響してしまうと思ったので、かなり真剣にやりました。ただ、1回2時間くらいかかり、ずーっと集中しているため、体にこたえる作業です。その分終わったときに達成感がありました」

次に江上君が挑戦したのは「ラベル貼り」、そして搬送用の箱の中でラベルが擦れないようにするための「カバー巻き」です。いつか自分が造った焼酎をこうやってひとつひとつ大切に包装する日が来るかもしれません。
その隣りでは、小倉君が段ボール箱の組み立てを行っています。箱も数をこなそうとしたら、ちょっとした力仕事です。小倉君の額に汗がにじんできます。

もちろん作業は出荷の準備だけではありません。今度は、蔵の中での研修です。小倉君は芋洗い機の操作を担当しました。

小倉君「芋洗い機の操作は難しかったです。上から落ちてくる芋を洗い機に入れて、下に落として切ってもらうのですが、それを自分が操作します。下に落とすペースの配分も最初はわからないし、上から芋がすんなり落ちてきてくれるわけでもなく、つっかっかったりして。上からのことばかり考えても、下に落とす芋のことばかり考えてもうまくいかないものです。落とす芋が大きいと、その芋が出口につっかっかって、いっぺんにその間から芋が落ちてきてしまったりと、ほんとうにあせります。ものすごくテンパリました」

今回、彼ら二人の指導役となったのは渡邊専務の叔父、木脇英人さん。蔵でのいろんな実務について、丁寧にそのやり方を伝授していました。

ご指導されて、二人の働きぶりはいかがでしたか?

木脇英人さん「小倉君、江上君 元気ですか?
わざわざ宮崎まで研修に来ただけあって質問や仕事を積極的にしていましたね。
最近、若者と接する機会が少なかったのですが、二人ともハキハキと話をし、
素直で明るい学生さんで近頃の若者もすてたもんじゃないなぁと感心しました。

ちょうど私が体の調子が悪くて仕事が出来なかったので、大変助かりました。
本当にありがとうございました。感謝・・・・・ 涙・・・・・・
まさか!また冬休みに来るって?
うれしい〜
 おじさんは勝手に約束してたからね!
今度は鍋を囲んで、君達が造ったあの旨〜い萬年を飲みましょう。
最後にOK牧場!」

木脇さん、とってもお茶目なコメント、ありがとうございます。

屋外で一息ついたのもつかの間、彼らが掛け芋された二次もろみの攪拌に挑みます。もろみもこれだけの量になれば“挑む”という言葉がぴったりなほどの力仕事、重労働です。

二代目・一男さんが手作りした櫂棒を握って、ひたすら攪拌する二人。先ほどまで笑みがこぼれていた表情からは一変、眼差しは真剣そのものです。吹き出した汗が、首に巻いたタオルに吸い込まれていきます。

木脇英人さんの隣りに、別の作業を終えた渡邊専務がやってきました。二人の奮戦振りを見つめています。

渡邊専務「二人とも想像していた以上に頑張ってくれました。11月から新酒の出荷も始まり、仕込みを続けながらビン詰め、発送の作業をやらなくてはならなかったので、彼らの助けなしでは体がもたなかったと思います。彼らが帰るころにはうちの家族にとけこんで、居てあたりまえの様な存在になっていたのではないでしょうか。
来年は仕込みはもちろん、芋の植付や草むしりなんかも手伝ってくれるとうれしいのですが(^^)」

植え付けや草むしりは、ぜひ石原けんじ大佐にもお願いしたいところですねっ!

記念写真
11月5日。6日間の研修が終わりました。最後はお世話になった渡邊家の皆さんとの記念撮影です。

現場で実際の作業にたずさわった日々。今回の研修は、二人にどのようなものを残したのでしょうか? ちょっと伺ってみました。

江上君「夏に友達5人で九州の焼酎蔵を巡る旅をしたんです。その時に、初めて渡邊酒造場に伺ったんですけど、社長も幸一朗さんもやさしくいろいろと説明してくださり、とても暖かい感じの蔵だなあという印象でした。

そして、千葉に帰ってからある方と知り合いになり、その方は幸一朗さんと仲が良いという事で、蔵の実地研修をさせていただく事になったんです。学校で勉強するより、実際に体で体験した方が何倍も勉強になると思いましたし………。

「まだ学生だから」といって、僕らをいろいろと面倒みてくれるその方には感謝の気持ちでいっぱいですし、人のつながりというのは人生にとって宝物だなあと感じました。これからも大切にしていきたいと思います。

蔵を研修させていただいたのはたったの6日間でしたが、力仕事が多く、また、繊細な部分もある酒づくりの大変さを実感することができました。しかし、一生懸命真心をこめてつくり、その焼酎が多くの人においしく飲まれるんだと思うと、うれしくてわくわくしました。

やはり、つくりに携わって苦労をしたからこそ、できた焼酎がとてもかわいいし、人にもどんどん勧めたくなります。そして、飲んだ人がおいしいと言ってくれたら、とても嬉しいんです。

仕事は大変なものが多いのですが、みなさんとても気さくなので楽しく仕事ができました。また、蒸留した焼酎を他のタンクに移し替える時に、蔵全体に萬年のやさしくて甘い香りが広がるんです。あれには、ものすごい魅了されました。

何にもわからない僕らをやさしく、そして楽しく教えて下さった渡邊酒造場のみなさん、どうもありがとうございました。6日間はとても充実していて、あっという間でした。まだまだ教えてもらいたい事がたくさんあるので、時間ができたらまた勉強させてもらいにいきたいと思います」

小倉君「たいへんだろうなと、ある程度の覚悟はして、宮崎に行ったのですが、実際は予想を上回るものでした。

焼酎を実際に蔵に入り、造るというのは初の体験で、知らないことや、やったことのないことだらけでした。最初は、その作業にとまどい、うまくいかないことだらけでした。しかし、渡辺家の皆さんは、一つ一つ教えてくれ、次第にそれぞれの作業に的確さと、すばやさを身につけられていけてると感じました(自分だっけかもしれないけど)。

最初はまったくといっていいほどうまくいかない櫂入れも、最後の日には、まだまだですが、やっとそれなりにできるようになれました。そのように毎日、毎日、充実して過ごせ、6日間はあっという間でした。

渡辺家の皆さんは、ほとんど初対面の僕らを、暖かく迎えいれてくれて、明るく、楽しく接してくれて、ほんとうにたのしい毎日を過ごせました。渡辺家の皆さんの暖かさを感じ、やはりこのやさしい萬年の味はここから来るものなんだなと、感じました。

文章がへたくそで申し訳ないのですが、よろしくお願いします。ただ本当に、渡辺家の皆さんに感謝の気持ちと、行ってよかったという、満足感でいっぱいです」

(BGM:The Beatles「With A Little Help My Friend」)

蔵での実務は初体験だった二人、それだけに今回の研修ではたくさん得るものがあったようです。そして、仕込みで繁忙期のまっただ中にある渡邊酒造場も、家族だけでは足りない人手を彼らが補ってくれたことで、貴重な助けとなったのです。

渡邊専務「10月の末週からが特に、本当に“猫の手も借りたい”っていう時だったんですね。偶然なんですけど、その時にちょうど二人が来てくれたんで、助かりました。こころから『ありがとう』と言いたいです」

江上君と小倉君が渡邊酒造場に研修に来ることになったのも、夏の日のちょっとした出会いから始まったものでした。ふとした巡り合わせから生まれたこの機会は、彼らにとって、小さいながらも大切な想い出になるものと信じています。

二人が学校を出て、蔵人として旅立つ日が、楽しみです。


萬年歳時記TOP 次へ