【神無月・弐】
Life in Neo Agricultural Age

2003.11.04 by 猛牛


(BGM:DEREK & THE DOMINOS「I Looked Away」)

関東から宮崎に戻った渡邊専務を待っていたのは、田野町の10月、秋の実りの季節です。

農業が盛んな田野町では、稲の刈り取りも進み、名物の大根も土の中ですくすくと育っている真っ最中。そんなうららかな日々にあって、渡邊酒造場の農園には、大地からのかわいい恵みが実っていました。

さて、これは、なんでしょう? ・・・・そう、枝豆です。

渡邊専務「“床出し”というんですが、つまりハウスで種芋を植えた後に、爺ちゃんが枝豆を植えるんです。毎年作ってるんですけど、これがまた美味いんっすよっ! まだ実がちっちゃいですけど、少し収穫してみました」
収穫されて、茹でられた枝豆です。いやぁ〜、とってもよい色艶をしていますね。塩を振ってビール、いや焼酎をクイッ!と飲りたいものです。

渡邊専務「家族で焼酎を飲むときのツマミにしてるんすけど、やはり自分で作ったものを収穫して自分で食べるときは、やっぱりいい気持ちっすよ」

田野町の特産品として有名なのは、漬物用干し大根と、その大根で造られた漬物、そしてお茶です。ここで、田野町の一番の名物である漬物用大根の生産現場を見てみましょう。

この大根畑は、渡邊酒造場からほど近い、周りを森に囲まれた閑静な場所にあります。渡邊家が懇意にしているというある農家の畑です。

干し大根では、日本一の生産量を誇る田野町です。来年冬の収穫を目指して、大根の植えつけがすでに始まっていました。

渡邊専務「植えてからどれぐらい時間がたっているかは解りません。大根は最初に結構たくさん植えて、出てきた芽を手作業で間引いていきます。この作業もとても大変そうっすよ」

苗が成長し、鰐塚山から寒風が吹き下ろす頃、名物「大根やぐら」が組まれます。

ここはすこし成長して、葉もちょっとだけ茂った畑。

渡邊専務「10月の中頃は、近所の大根生産農家の方が、間引いた大根の葉を分けてくれるんですが、これを塩漬けにするとうまいんっすよ!」

さすが地元。その場に居ないと味わえない物がたくさんあります。塩漬けの大根葉は、聞くだけで焼酎のツマミにぴったり。一度食べてみたいものですね。

では、平野部の畑から、ちょっと竹林の中に入ってみましょう。

ここは、渡邊家が所有している竹林です。鬱蒼として、太陽の光もなかなか届きません。

渡邊専務「この竹林は、蔵から歩いて5分ほどのところにあります。なんでうちが、こんな竹林なんか持っているか、僕もよく知りません(^_^;)。爺ちゃんや親父も忙しくて、なかなか手入れができないんですよ」

渡邊酒造場では、焼酎の原料となる芋、家族の食卓を飾る米や野菜などの農作物だけでなく、焼酎造りに欠かせない道具も、自然のものを活かし、可能な限り自作してまかなっているのです。

渡邊専務「この竹林から竹を切り出して、道具を作ります。うちで使っている櫂棒と竹箒は、こんな竹を切って作るんですね」

これが、実際に自作された櫂棒と竹箒です。これらの道具はどなたが作られるんですか?

渡邊専務「櫂に使う竹は、僕と親父が取りに行って、作るのは爺ちゃんと僕が作っています。もちろん以前は親父も作っていましたが、最近は忙しいので、もっぱら爺ちゃんと二人の役目になってます」

とっても器用なんですね。専門の職人さんが作るのかと思っていましたが、櫂や箒ひとつにしても手作りとは驚きました。

渡邊専務「爺ちゃんも、もういい歳なんですけど、なかなか手作業を止めないんっすよ。隠居するなんてまだまだ、だって。だから元気で現役なんでしょうね」

(BGM:DEREK & THE DOMINOS「Little Wing」)

さて。焼酎造りは農業の延長線上にある、とよく言われます。時代や世相が移り変わり、醸造のシーンも、技術が進歩した分、かつての姿が想像できないほど変貌を見せてはいます。しかし、自然や大地の営みとの密接な関係はいまも変わりがありません。

田野町の豊かな自然と共存しながら、今日も続く渡邊酒造場の焼酎造り。その風景は、都会に住む我々の心を惹きつけてやまないものがあります。古いながらも新しい、これからの「人と農の時代」を予感させるひとつの在り方が、そこにあるように思えるからです。


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