【長月・壱】
September In Tano

2003.09.05 by 猛牛


渡邊酒造場がある宮崎県宮崎郡田野町は、県都・宮崎市内から南西へ車で30分ほどのところにあります。南北を山に囲まれた扇状地の盆地には田畑が広がり、家々が点在します。

さて、今立っているのは、町の象徴である県南部で最も高い鰐塚山の山頂。標高は1118m。

渡邊専務「頂上からは宮崎市内、都城はもとより、日向灘や志布志湾までもが一望できるんっすよ。もちろん天気がいい日だと、桜島の噴煙も見ることができます」

渡邊専務「あえて画像は撮影しなかったんすけど、NHKをはじめ民放各局や警察などのアンテナがいっぱい、そう、10基以上も並んでるんすよ。“テレビ塔”と呼ばれて地元でも親しまれてます。子供のころは、よく連れてってもらったもんですね。別にこれと言って何もないんですけど、眺めはとても素晴らしいっす」

冬、この秀峰から“鰐塚おろし”と呼ばれる寒風が町に吹き下ろします。同時期に冷たい西風が発生するのは、県下でも田野町が一番。これが、名産である漬物用の大根栽培に適した環境を生みだし、全国トップの生産量を誇ります。大根を“鰐塚おろし”に当てて干すために平野部の各所で組まれる「大根やぐら」は町の風物詩です。

渡邊専務「いやぁ〜、冬はとにかく寒いっすよ(>_<)」

かつてこの山頂では、雨乞いの儀式が行われていました。「雨太鼓」と呼ばれるもので、直径2mもある牛皮の大太鼓を担いで登り、叩いていたと言います。この名前は渡邊酒造場の商品名にもなっています。

鰐塚山の五合目あたりにあるというこの滝は、昭和47年の7月に偶然発見された「清幹の滝」です。ふだんだと、高さ20m、幅8mの豪快な姿を見せてくれます。滝の周囲を包む山の緑と相まって、見る者の心を和ませてくれます。

渡邊専務「残念だなぁ。最近、雨が降ってないんっすよ。で、あまり水が流れてなくてですねぇ・・・」

鰐塚山の麓にある「わにつか渓谷いこいの広場」。敷地面積11haの中に広がる町民のくつろぎの場です。森はシイやタブノキといった照葉樹林で構成され、その中で多くの野鳥や動物たちが戯れています。四季を通じての散歩や登山、夏はキャンプファイアーに河川プール、秋は紅葉狩り。田野らしい折々の自然との触れ合いがここにあります。
渡邊専務「撮りに行ったのが昼だったんで、ちょっと暑かったんすよぉ(~Q~;)」
鰐塚山に源を発する清流・別府田野川は、麓の平野部で片井野川と合流します。その合流点にほど近いJR日豊本線・田野駅のすぐそばに、『萬年』の渡邊酒造場はあります。さて、平野部に下りてみましょうか。
鰐塚山の雄大な山容、蔵からの眺めです。“テレビ塔”を遥かに望みます。
撮影の途中、突然目の前をJRの特急列車が通過しました。ほんとうに線路の真横に蔵があるのですね。
渡邊専務「これが、ガタガタガタ!って、結構うるさいんっすよねぇ(──;」
渡邊酒造場が創業された大正時代以来、蔵の日々の移ろいをずっと見つめてきた、赤レンガの煙突です。レンガの端々は少し朽ちていますが、もう黒い煙を吐くことは無くなったとは言え、蔵の「顔」であることに変わりはありません。
その煙突を見上げているのは、居候番犬の「リンダ」ちゃん。雌犬なのですが、性格はそうとうに獰猛で、渡邊専務でも手を焼くときがあると言います。

渡邊専務「よく自分で紐を噛み切って、逃げだすんっすよ(@_@;)。それで、一週間ほど居なくなっちゃうことがザラにあります(^_^;)」

鰐塚山からの清流が土地を潤し、吹き下ろす風が産業を潤す、自然と共存する町・田野。その平野部のただ中にある渡邊酒造場で、今年の芋焼酎の製造がいよいよ始まりました。9月1日、『黒麹萬年』の仕込みからスタートです。

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