2003.03.21 by 猛牛 2004.01.27 補遺

■古典的な風情に、正しい「酒類カレンダー」の姿が・・・。

そうである。酒の、そして焼酎の暦(カレンダー)は、こうあらねばならぬ。

これは『萬年』渡邊酒造場さんの今年のカレンダーなのだが、実に忠実に堂々の酒類カレンダーである。今様の感覚でいけば、日本画の美人像などちょいとレトロ過ぎるかも知れない。がしかし、極めて民俗的な意匠の、正統派暦なのだっ。潔い。というのも・・・。

今宵冷たい 片割れ月に
見せた涙は 嘘じゃない
女嫌いの 男の胸に
秘める面影 誰が知る
男松五郎 何を泣く
(「無法松の一生」吉野夫二郎 作詞 古賀政男 作曲)

わが郷土・北九州市のヒーロー“無法松”こと富島松五郎。彼を主人公にした映画『無法松の一生』に、たびたび当サイトでネタとして引っ張っている、わてが最も気に入っているシーンがある。

無法松の生業は人力車を曳く車夫、それは当時最下層の職業だった。彼は未亡人・吉岡夫人にほのかな恋心を抱きながらも、身分の違いや因習・制度故に想いを叶えられない。飲み屋でひとり、グイとあおる男酒。店の壁に掲げられた酒のポスターにふと目が止まって・・・日本画の美人に重なるあの吉岡夫人の姿。うっ!(涙)

というわけで、古くから酒のポスターは美人画が多かったようだ。以前、福岡市内のある酒店で、巨大な額に入っていた某清酒会社の初代ポスターを見たことがある。明治期の制作かと思われたが、これもモチーフは日本画の美人だった。

◇   ◇   ◇

男が飲む時に、酒と美女が切っても切り離せないのは、昔も今も同じだ。

例えば夏場の生ビールのポスター。ビキニ姿でそれはもぉ〜〜ムッチリと破裂しそうなくらいのホーマンなる肢体、特に胸部、ついでに臀部をムンムンに強調して、俗に「萌える」とでも言うべき風情がそこに横溢している。表層的には、現代風な扇情ぶりで野郎どもの劣情に迫りながらも、しかしそれは根本的に言えば、伝統的日本画美人という意匠がスパイラル的に進化した今様形態でしかなひ。

かつて“車夫馬丁の酒”と言われた焼酎のポスター・カレンダーの素材として、日本画の美人はまさに原点。このカレンダーが正統派であるというのはそこだ。最新カレンダーのモチーフとして、平成の御代において美人画を選んだことに、未だ遺る「民俗性」を感じる。

余談だが、当サイトが焼酎と焼酎美女を探究しているのも、民俗学的に焼酎愛飲の世界を見極めようという地道なフィールドワークに他ならないのである(-"-)

■美人画をじっくりと拝観する。

ちゅーわけで、長口舌はご退屈。全6点の内から、わてお勧めの美人像をじっくりとご覧いただこう。

かつては扇情的に情に迫った美人画も、現代では「萌える」というよりも「愛でる」と言った方が、適切であらふ。

作者は唄野桃翠氏。日本画に詳しい家人に聞いてみたり、網で検索してみたが、どのような方なのか判明しなかった。しっとりとした中にも、顔や表情などに現代風な感が漂う。比較的最近の作なのかも知れない。

■「中洲川端芳子嬢よ!(T_T)」。無法牛、よよよと泣く一枚。

さて、ペラペラとめくっていて、わての目に留まった一枚。それが下記である。

飲むは『無濾過・萬年』。グビッと杯を空けて、上目遣いで見る暦の美人。胸中にオーバーラップしてくるは、あの「まりりんBAR」にご在勤中の“中洲のマタハリ”こと、中洲川端芳子嬢。「ああ、マタハリぃ〜! うぐっ(T_T)」

泣くな嘆くな 牛じゃないか
どうせ実らぬ 客じゃもの
愚痴や未練は 博多湾に
捨ててキーの 乱れ打ち
夢も通わず 寄る年波

わかっていても、今夜も「まりりん」へと突進する無法牛であった(ご苦労様ぁ(^_^;))

■補遺(2004.01.27)

本稿を書いた時点で、このカレンダーの原画の作者である唄野桃翠氏について、わての浅学の故、どのような方か未詳とした。しかし、昨日1月26日、作者の縁者である唄野 薫氏からメールを頂戴し、プロフィールが判明した。ご指摘いただいた唄野 薫氏に感謝申し上げると共に、作者の唄野桃翠氏に心よりお詫び申し上げます。

以下が頂戴したメールの内容である。唄野桃翠氏は現在ご高齢ながらも第一線で活躍されている画家であった。

----------------------------------

はじめまして唄野と申します。
先日、知り合いの者より、私の父桃翠の作品で渡辺酒造場さんの「美人画カレンダー」が、”九州焼酎探検隊”の萬年「美人暦」のホームページに掲載されているとの知らせを受け、早速開示いたした処、作者の詳細不明とありましので、簡単に経歴を記載致します。

唄野桃翠(バイノトウスイ)
大阪府堺市に在住
大正2年生まれ。90歳と高齢であるが今も現役で美人画制作に活動。
師は北野恒富門下松田富喬。
堺市美術協会会員招待市展顧問


以上よろしくお願いします。
尚、「美術年鑑」の無所属で掲載されていますので、一読戴ければ幸いです。


九州焼酎探検隊TOP