2002.02.16 by 牛心亭無楽

♪あたしゃ お前に 火事場のまとい 振れば振るほど 熱くなる

ぬぅあんて、粋な都々逸が遺ってございます。

江戸の昔でございますが、今みたいに科学消防車なんて文明開化の利器がある以前の話、め組だのは組だの、火消しの連中が屋根に上がってまといを振り回していたって、時分ですな。

まといを振るのに、男とぉ女の色恋沙汰、片思いを掛けましてぇ・・・まといとおんなじに、お前ぇに振られれば振られるほど、俺の恋心は火事の炎のように熱くなっちまうってぇ、やるせない想いを粋に織り込んだものでございます。

ところで、以前『江戸のそらきゅう』という噺を一席伺いましたが、その中でかの宮武外骨先生の記事の中に、このそらきゅうについての古典籍よりの引用がございました。

「可の字は可致、可被下、可決、可愛、可憐など、凡て上につき、下につかぬという義で(中略)、之を「べくさかづき」と名付けて・・・(後略)」

下には置けない杯てぇ意味を引っかけました洒落で、可の字を当てるなんざぁ、さすがに粋な“ねーみんぐ”でございます。

というわけで、格調高いマクラに続きまして、伺いますのが峰の露酒造さんの販促用『舞せんげつ』の可盃の一席でございます。この品、色合いと申しますかぁ、焼成の具合と申しますかぁ、ぬぅあんとも優美な品でございますな。

女性に例えますってぇと、柳腰、小股の切れ上がったよか女、なんてぇ申しますか。浮世絵なんかで申しますと、英泉や国貞あたりの妖艶な魔性の雰囲気ではありませんで、やはり歌麿あたりの清楚な美人画を思い起こさせる風情が、ございます。

まるで『舞せんげつ』という焼酎そのものを表しているかのようで。

◇   ◇   ◇

ま、器自体は、江戸美人を垣間見るようなてぇへん美麗なもんでございますが、これを手に入れた御仁ってぇのが、美麗にも粋にも縁のないただの飲兵衛でありまして、えぇ、なにを隠そう、当寄席の下足番、猛牛という男でございます。

先日のことでございますが、江戸の頃でいいますと、平賀源内先生が“ぷろでゅーす”された『第一回薬品会』が如き物産展が、筑前の会所でございましてぇ。そこに峰の露さんが出品されておったそうでございます。

で、会場に現れましたのが猛牛でして、『時のわすれもの』ってぇ焼酎をいぢ汚くガブガブと試飲しておりますってぇと、ふと棚を見ますと、この可盃があったそうで。

もう、販促物収集が命、ってぇ血走った目で係員さんに詰め寄ったそうでございます。『時のわすれもの』を一本買っていたそうですが、さらにもう一本買い足しまして、「いやぁ〜、コレ素晴らしいかですにゃ〜〜〜。済みまっしぇんばってん、コレ、貰えんですかぁ〜(~Q~;)」ぬぅあんてズーズーしさで、三顧の礼。

いやはや、係員の方を困らせたそうで。まったく粋もなにもあったぁもんじゃあ無い。そんなにしてまで欲しいのかってんで、周りの方も呆れ果てちまった。

可盃は“下に置ない”ということに掛けているからこそ、粋でございます。

販促物すべからず、皆様方が、どこぞの著名な窯元作家の作品と比べて取るに足らないもの、値打ちのない物、どこにでも転がっているもの・・・と思われているからこそ、わざと“下に置ない”という洒落が活きてくるもんでしてぇ、猛牛のようにマジに“上に持ち上げる”ってんでは、粋もヘッタクレもあったぁもんじゃぁない

何事も神格化はほどほどに、ということですな。

ここで都々逸をひとつ....、

♪あたしゃ コップに カラオケ宴会 聴けば聴くほど 醒めてくる

まいど、カバカバ恣意お噺でございました。m(_ _)m


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