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2001.03.01 by 猛牛 | |||||||
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わては全国紙のM新聞については、とても思い入れが深い。北九州の実家では、わてが生まれる前からこのM新聞を購読しており、いまでもそれは続いている。わては生まれてから結婚するまで、M新聞とともに育ったようなものだった。わてのDNAには、M新聞が折り込まれていると言って過言ではない。(結婚後はにょぼの趣味で別紙を購読。辛いじぇ(^_^;))
でも、先日、同社のサイトを覗いていると、『愛飲鯨飲』なるコラムに出会ったのだ。 同社の総合メディア事業局にいらっしゃるO氏の手になるものである。清酒に対する該博な知識と経験で書かれたその内容は、清酒音痴のわてには大変勉強になるコラムである。O氏はその道で有名な方なのであろう。わては清酒に弱いので失礼ながら存じ上げない。 中でも特に「幻の酒」というコラムは、現在本格焼酎が同様な問題に直面している折、とても考えさせられる内容であった。「「幻」とか「限定」と書かれると飛びつくのが日本人の体質だ。「幻」であればなんでもいいらしい」という一文は、まったくその通りだと思う。 が、しかしである。 ■大都市圏の市場性故かと、思ったんやけども・・・。 バックナンバーを見ていると、一編だけ本格焼酎のコラムがあったので覗いてみた。「洋酒に負けない焼酎」というタイトルだ。 一読、「おろ?」っと思ったのだ。 まず“洋酒に負けない”というタイトル。猛牛個人で言えば洋酒がどうだろうと、本格焼酎は本格焼酎なのである。ただ一般には、本格焼酎は、清酒はもちろん洋酒よりもレベルが低いという意識がまだまだ根強い。だから本格焼酎へのトライアルを促進するためには洋酒との対比で土俵に持ち込む、という手は特に関東関西の市場性を考えると有りとは思う。 「黒糖酒は10年近く寝かせると、これはれっきとしたラムの味になる。なぜか、ラムによく出るヨード臭が少ない。キューバの「ハバナクラブ」15年ものにはかなわないが、見事なラムといえる」 「ムギも面白い。寝かせる樽にもよるが、長期に熟成させるとピートの香りこそないもののウィスキーそこのけの味が出る。さらにアメリカのオーク樽で数年寝かせると、見事に琥珀色がついて、一種のバーボン風味が出る」 と言った文言も、本格焼酎にトライアルしたことのない洋酒ユーザーの気を惹くという意味では有効であろう。ネットの力で全国的にいい方向に作用してくれればありがたいことではある。 しかし結語の「焼酎は居ながらにして世界の味を楽しめ、なめたものではない」という言葉にはとても引っかかりを感じた。本格焼酎は「なめられたもの」という意識が前提にあるのは致し方ないとしてもである。「世界の味を楽しめる」という言葉は、本格焼酎は他国の蒸留酒のキッチュ(まがいもの)であるというイメージを与えるのではないだろうか。 世界の味を楽しみたいなら、その辺の酒屋に行ってオリジナルのラムなりバーボンを買えばいいこと。本格焼酎で味わう(味わえる)のは“本格焼酎の味”なのだと言って欲しかったにゃ〜(^_^;) ■なぜ焼酎には許されて、清酒には許されないのかにゃ〜? しかし、他のコラムを詳細に見てみると、さらに気になる記述にぶつかった。「生老ね三昧 」というコラムである。(http://www.m・・・・i.co.jp/life/hobby/sake/column/49.html) それは、 「吟醸酒が初めてまたはそれに準じる程度の人は、フレッシュ感のある生をフルーティな香りと共にスパークリングワインを飲む場合に例えてしまう。これが実は迷惑なのだ。「ワインみたい」というが、ワインと日本酒は味の上で、決して似てはいない。ワインを知らない人ほど、酒をワインに例える。困ったものだ」 という一文。 清酒を飲めば馬鹿のひとつ覚えの様に「フルーティー」としか言えないわてには、耳に痛い言葉ではある(自爆)。しかし、本格焼酎をラムみたいとかバーボンみたいと言っていた筆者が、ここでは、清酒をスパークリングワインに例える“トーシロ”を迷惑だ、困ったものだと言い切っている。 “ワインと日本酒は味の上で、決して似てはいない”のは確か。しかし、焼酎をラムやバーボンに例えて世界の味を楽しめるという評言を与えながら、「ワインを知らない人ほど、酒をワインに例える」ことを困ったと言われるのは、こっちも困ってしまう。 なぜ焼酎には許されて、清酒には許されないのかにゃ〜? 酒に上下の貴賤は無いと、ある方がおっしゃったそうだが、わてにはその逆の意識がどうしても感じられる。このコラム全体は清酒がテーマであり、全編清酒の伝統性や正当性を主張する色彩が濃い。そのため焼酎については、どうしても“付け足し”的扱いにならざるを得ないのだろう。 ただし「例えること」は決して悪いことではない。未知のモノに遭遇したとき、人はそれぞれの経験値の中で類推する事物を引っぱり出し、未知のモノに対して相対的な位置づけを行うのは人間の心理である。特にトライアルしたばかりの人はそうであろう。 しかし、本格焼酎には相対性を許しながら、清酒には絶対性を求める筆者のスタンスが本格焼酎党としては、どうにも引っかかってしまうのである。 ■一般論と個別論の混濁。 本格焼酎も清酒も含めて、九州人にとって見逃せない一文がさらにあった。「蔵巡り8(九州)」なるコラムである。(http://www.m・・・・i.co.jp/life/hobby/sake/column/48.html) 九州に蔵元見学に行った筆者の紀行文的評論なのだが、 「九州全体がそうだが、大分県も麦焼酎の本場だ。宇佐市の片隅で、麦を1本のタンクに仕込み、直径1メートル、長さ2メートルほどのホワイトオークに3年以上寝かせた“和製バーボン”を造っている蔵があるのには驚いた」 というもの。またしても「和製バーボン」である。 さらに大分県の有名な麦焼酎メーカーについての記述が続く。長くなるが引用してみよう。 「もっともこの周辺では、全国的に有名な焼酎メーカーが2社ある。うちの1社は違った意味で驚かされた。従業員が案内をしてくれたが、「うちはノウハウが多いので、ここしか見せられません」といいつつビン詰め工場と、焼酎を樽貯蔵中の部屋をガラス越しに見せてくれた。結局、何のことはない、このメーカーはビン詰め工場で焼酎を作っているだけだと判明(?)した次第。なにをもったいぶっているのか、蒸留酒に特許まがいのものがあるのかしらと奇妙な感想を持たされた。アルコールの複合企業を目指しているようなことも説明の中に入っていたが、会社の規模が大きそうなのに、説明する従業員の態度と知識がこの程度だと、この会社はこれが限界かな、という感想を持った」 確かに書かれている某2社について、本格焼酎ファンとして想像がつくであろうし、また商品自体にも色々なご意見はあろう。しかし、この両社が関東関西圏で形成している本格焼酎市場のパイを考えれば、見逃せないところだ。 両社とも正直言ってわての好みの焼酎ではない。しかし、これを読むと両社はもちろん本格焼酎全体がなにも考えて作っていないものだと受け取られかねないと思った。本格焼酎に詳しくない読者なら「大きな企業でもそうなら、小さな企業ならなおさら・・・」とイメージしてしまうのではなかろうか。 「しかしながら、蒸留酒攻勢の中で頑張っている醸造酒蔵がいくつもあるのがうれしかった。熊本へ抜ける途中にある蔵だが、全国新酒鑑評会の金賞受賞常連蔵といってもよい。立ち寄って蔵内をじっくり見学させてもらったが、これまた驚き。さして大きな蔵でもない。薄暗い蔵の裏まで入ったところで、ござの上に麹がさらしてあった。壁が崩れて外の陽光がいやに明るい。畠があるのか、土も乾燥して輝いて見える。と、側をスッと駆け抜けるものがあった。ぎょっとして目を凝らすと大きなネズミだった。いいえさ場になっているようだ」 ここまでは個別の蔵で体験されたことで、その通りだったのであろう。しかし続いて、 「「汚い蔵はきれいな酒が出来ない」という。これでも、金賞受賞が成り立つのだから、九州って分からない。この汚さというよりもはや不衛生は“豪快”の世界に入るのかどうか。九州の懐の深さなのだろうか・・・。」 と、ひとつの蔵元の事例が一転して九州全体の一般論に置き換えられる。ある蔵元の状態をいかにも九州全体の蔵がそうだとイメージされかねない、この「九州」という言葉が持つ地域性・気質性への敷衍は、すこし乱暴かなと思った。地元の清酒の蔵元さんがこの一文を読まれたとしたら、どう思われるか聞いてみたいところである。 「蒸留酒攻勢の中で頑張っている醸造酒蔵がいくつもあるのがうれしかった」の蒸留酒とはすなわち本格焼酎だと判断しているが、日本酒評論家としての危機感を現しているのと同時に、九州の醸造酒蔵に対する筆者のイメージがここに滲んでいるように思える。 大工場で作られる本格焼酎、ネズミの走り回る醸造酒蔵・・・その対位法の中に、どちらにしても九州の酒文化に対する筆者の気持ちが伺われるように感じた。 さらに上記の記述に続く、熊本市内の料飲店で三倍増醸酒を飲む筆者のエピソードも興味深い。筆者が最悪だと思っていた三倍増醸酒を、他のみんなはうまいと言って飲んでいた、という話。わては清酒には詳しくないので、詳しい方はお読みいただきたい。いろいろと考えさせられる内容である。 |
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というわけで、長々と書いてしまいましたが、申し訳ありません。上記感想は猛牛の個人的意見ですのでご了解ください。リンクは張れませんが、お手数ながらぜひ原文をご一読いだだければ幸いです。全編、たいへん為になるコラムだと思います。
皆様のご感想はいかがでしょうか? (なお、この引用につきましてはM新聞社さんのご了承を得ております。この感想文について「根底にお酒を愛する心があれば、OKです」とご快諾いただいたM新聞社さんに心より感謝いたします。) |
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