2001.06.06 by 神田伯牛

時は平成の御代でございます。

筑前は黒田五十五万石の台所・博多に御店を広げております酒のディスカウンターたちが集まって、なにやら激論を闘わせております。実は、当時の筑前、そりゃぁもう、てぇへん深刻なプレミアム焼酎飢饉に陥っていたのであります。

それらの焼酎ってぇと、もともと蔵元の石高も少ない。その上、大穢土はもちろんだが、筑前でも流行病みてぇにブームが勃発した。という次第で博多のディス屋連は、需要地間競争に巻き込まれちまって、肝心のプレミアム焼酎が手に入らなくなったん。

値幅がダントツにでっかいってんで、希少ならなんでも来い。値付けは好き放題。“濡れ手にプレミアム”の商売だったが、それがままならなくなった。まさに筑前プレミアム焼酎市場を揺るがす、危急の時と言っても過言ではなかったのであります。

◇    ◇    ◇

「おい、ぶろーかーからの電話は掛かって来たとな?」

「うんや、まだばい」

「もう何ヶ月もプレミアム販売がでけんったい。儲け損なうばい」

「そりゃ、関東の方がくさ、所得も高いし、高ぉ売れるったい。筑前は所詮市場が小さいけんのぉ」

「そりゃ解っちょる。ばってん、懇意にしちょるぶろーかーからの救援焼酎はまだ来んとか・・・」

「ほんと食っていけんぞ・・・。救援焼酎が早ょお着かんかのぉ」

「ブームの今が稼ぎのチャンスなんにくさ。なんばしよるっちゃろ」

とまさに一大事。ケンケンガクガク話し合っておりましたら、そこに一本の電話が掛かって参りました・・・、

「ふむ。ふむ。ふむふむふむふむふむふむ・・・・済まんのぉ!(ガシャ)」

「なんちな?なんち言いよったな!?」

「ぶろーかーから『杜伊蔵』が百本入るばい!救援焼酎が来るばい!」

「やった!やった!」

「売るぞ!どんとプレミアム乗せて、売るぞぉぉぉぉ!」

「待てば伊蔵の日和有り、ばいのぉ〜」

「さすがぶろーかーじゃ、仁義忘れんと、ちゃんと救援の手ば差し伸べてくさ」

「しっかり儲けんとな。はっはっはっはっは」

ディス屋連一同、安堵致しまして、家路をたどったのでございます。

◇    ◇    ◇

ところが、翌日のことでございます。あるディス屋が店頭に一本二萬両でならべた途端、電脳上で噛みついてきたのが小林牛三郎という御仁。

この人物、筑前焼酎探索隊なる家頁の管理をしておりまして、毛虫の次にプレミアムが嫌いだってっぇくれえの、大のプレミアム嫌い。頁に「どわらけねぇ価格で売るとは、何事ぞ!(-"-)」と書いてありましたので、見て怒ったのがディス屋連。

「せっかくの救援焼酎を売ろうとしよったら、いらん事書きやがってくさ」

「商売の邪魔ばい。ほんとあたん(頭)来る」

「値段上げても、買うもんがおるっちゃけん、売れたらそれでよかろうもん」

「牛の野郎ぉ、ぶった斬っちゃる!」

ディス屋連は牛三郎を斬り殺そうと、家へと押し掛けたのであります。

◇    ◇    ◇

「牛、出てこんな。たたっ斬っちゃる!」

「ステーキにしちゃるばい。」

「なしてプレミアム価格で売っちゃならんとな?」

と見ますと、牛が出て参りまして・・・

「刹那的な商売はいかんばい。庶民の味方ちゅーのが焼酎のあり方やろうもん」
「蔵元には銭は還元されてなかろうもん。そげなことは許せんったいねぇ」

と模範的回答。なにを抜かすかと、さらに怒ったのがディス屋連、

「わしらは、救援焼酎を売った金で、文武両道に必要な典籍やら器具の購入に充てようち思うちょるったい」

「そうばい!そうばい! その日暮らしじゃ、筑前は立ち上がれんめぇもん。プレミアムは筑前の教育、人造りに充てっとじゃ!」

さらに勢いづきまして、

「国がおこるんも、町が栄えるんも 、ことごとく人じゃ。じゃけ人物さえ出てきたら、人物さえ養成しちょったら、筑前の未来は明るいったい!」

「教育第一主義じゃけのぉ、わしらは。救援焼酎百本のプレミアムを元手に、学校ば設立して、いっぱい優秀な人材を育てようと思いよっとじゃ。それのどこが悪い!」

プレミアムにも三分の理、ぬぅあんとも高邁な思想でございます。で、ギュウの音も出なくなった牛三郎、怒ったディス屋のひとりに、あっけなく斬り殺されてしまったそうで。ドラマもなにもあったもんじゃあない・・・。

◇    ◇    ◇

これが、かの有名な小林牛三郎の故事でございまして、文豪山本牛三の同名の戯曲でもさらに知られるようになりました、お馴染みの話っ。

『平成焼酎六花仙』の内、牛三郎「プレミアム焼酎百本」の一席でございましたm(_ _)m


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