平成壱拾参年霜月十五日 焼酎山清貧寺檀家 猛牛筆

拙者、かねてより焼酎の“民俗的側面”を声高く語りをる。しかしながら、自らがその民俗的焼酎行を修め、いにしえの焼酎衆生、先達の労苦に想いを致し、民俗と心ひとつにならねば、まさに“仏語って魂入れず”。言うは易く、行うは難し。よって精進行にいざ入らん。

すわ、この民俗的精進行と申すは、焼酎の燗付けなり。古来より本邦の民に用いられし道具を使い、一心に焼酎の燗を付ける“焼酎護摩焚き”なり。

さて、“焼酎護摩焚き”なるもの、今様の住処、まんしょんにては極めて行い難し。炎立ち上り、煙房内に満ち溢れて、同房の女人、不動明王の如く怒り荒ぶること、論を待たず。囲炉裏なぞ望むべくも無く、まずもって、用うべきは「火鉢」なり。

現今、火鉢を手にするに、骨董荒物屋にて数万円もするはザラなり。この火鉢、知己を頼り近隣の農家より喜捨いただいきしもの。焼成されて、早六十年以上を数えると言ふ。ぬぅあんとも僥倖かな。

しかして、燗付け悟得の妨げの最たるものは、「五徳」なり。今様の荒物市ではまったきお目に掛かること是無く、市内各所の荒物屋を当たりしも顕れず。人里より遠く離れし某骨董屋にて発見す。女将曰く、出物!価二千五百円なりと。

火鉢、五徳揃いしが、床に敷くべき「藁灰」見つからず。昨今、農家の生業の在り方、大きく様変わりし、「せんとらる・ひーちんぐ」完備の邸宅多く、火鉢なぞも用いず、藁灰も不要と言ふ。郊外に出て、畦道の脇に建ち並びをる“じぇいえい・あぐり・しょっぷ”なる直営御店に尋ねしも、入手成らず。

ならばと、草木いぢりに用うる「川砂」にて代用す。

燗においては「ガラ」を用いることとす。炭の直火に当たりても、破れ損なうこと無し。まっこともって頼もしき味方なり。しかして、ガラの中身とは? 日向焼酎にありて、最も民俗的臭気ぷんぷん!の米焼酎『暁』をひたひたと注ぎ、燗付行にいよいよ入るなり!

◇   ◇   ◇

さて、炭を置き、瓦版紙を燃やし、火を起こす事とす。“着火薬”“機械式火打ち石”なぞ今様消費文明の飛び道具を用うること、一切無し。心、一にして、瓦版紙で火起こしすることこそ、行の要諦なり。まさに無念無想の心持ち。

ん〜〜〜ん、十分経過。火点かず。
ん〜〜〜ん、三十分経過。火点かず。
ん〜〜〜ん、六十分経過。火点かず。
ん〜〜〜ん、九十分経過。おっ!・・・ほのかに炎立ち上る。

その間、我が侘び住まいの周囲、瓦版紙燃え尽きし後の煙たなびき、長屋の軒下に充満す。近郷近在の衆出て、すわ火事か?と驚き慌てふためくも、いとあはれなり。

火点きて、その後団扇にて、ひたすら風送り、火勢を保つこと肝心要の事。とにもかくにも、指萎え、掌疲れ、腕引きつり、まさに難行苦行とはかくの如し(~Q~;)。先人の労苦、いかばかりか。“薪水の労”とはまっこともって、名言なり。

されど、燗付きたる『暁』の味わい、また格別。「そらQ」に注げば、たちまち芳香四方を圧し、口中に含めば玄妙なる奥深き味拡がる。合掌(-人-)。

さて、肴にと焼き始めたる「豚足」。滴りたる油、燃え上がり、猛煙、火鉢より立ち上る。我、まさに紫雲たなびき、これ奇瑞の顕れなるか!?と喜びたるも、近隣より「何ばしよっとな?煙たかろうもん(-"-)」の声有り。

嗚呼、民俗的燗付けの道、いまだ極めること得難し。


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