2003.01.09 by モウギュウ

田中丸減天(たなかまる・げんてん)
彼女は福岡県・志賀島の自然の中で生まれ育った
自由で奔放な20歳の女の子。
夢は「じゃがばってん。宇宙に行って青か地球ば見て、
それから宇宙ステーションで焼酎専門の居酒屋を開きたか!」
それくらい宇宙と焼酎が大好きな彼女は、宇宙への夢を目指した・・・。

この話は、それから10年後、彼女30歳の時のことである。


       ♪どの町の店にも “桐”は瞬くぅ〜
        余所はただ姿を 潜めているだけぇ〜

        他も飲みたぁい 毎度の夜だからぁ〜
        ・・・・・・・ 諦める〜ぅ〜

        どこで飲めるのだろぉ〜
        なにが飲めるのだろお
        とどまることを知らない“桐”の時間の中

        どの町の店にも “桐”は瞬くぅ〜

NA)なぁ、減天。宇宙に行ってステーションで焼酎居酒屋を開く夢はどうなったんだい?

(長く奥深いアールを描くメタリックなステーション内の通路。一カ所だけ区画の入口に暖簾が下がっている)
(暖簾には、宇宙焼酎居酒屋『げんてん』の文字)
(室内に入る。主人公・減天はカウンターに物憂げに肘をついている)

減天:じゃがばってん。ここでの生活も8年になるったいねぇ。ステーションから青か地球ば眺めるんも、なんか飽きてしもうたばい。ん? 博多は晴れかぁ・・・。

(店内の窓から青い地球が見える。九州の北部、志賀島と海の中道のアップ)

減天:でも2時間後には低気圧接近で、曇り時々小雨。ふぁ〜、気象予報会社に居った時のクセが抜けん(~Q~;)。そがんもこがんも、どうでん良か!・・・・そろそろ仕込みば始めんと。よっしゃぁ! 作業ば、すっどぉ!\(^0^)/

(ふと、焼酎の瓶を並べる巨大な棚を眺める減天)

減天:じゃがばってん、数が減ったばいねぇ。ねぇ! 栄爺! 地球の酒屋に注文は出したっちゃろ?

(厨房から亭主の栄爺が顔を出して)

栄爺:ああ〜、出したばい。来週のスペース・シャトルの便で荷が届く手はずになっちょるどぉ!・・・でもな。2500銘柄あったんが、この8年で1000に減ったけんなぁ。
減天:どうなったんやろ、地球は? ステーションまでは運賃も掛かるけんねぇ。焼酎の値段も地球の20倍やもん。もうちょっと安くなったら、値入れも上がって、こっちも儲かるっちゃけど・・・。
栄爺:減天、よかばい。志賀島で漁師ばやっちょった頃から比べたら、実入りも多なったし、暮らしも楽になったどぉ。

(夫婦二人して、ネタを串に刺している。突然、脇に置いていた豚足が宙に浮かぶ)

減天:おっと!ネタが逃げよった。これやから無重力空間の飲み屋は困るったいね(>_<)

◇   ◇   ◇

(店の入口からスーツ姿の男が入ってくる)

:ごめんください。

栄爺:ん? はい。どちらさんですか? 店はまだ開店前ですけど。

:はい。私、こういうものですが・・・。

(男、名刺を栄爺に差し出す)

花田:はじめまして。桐山酒造の花田と申します。実は、新しく宇宙用に開発したうちの商品のご案内をと思いまして、お邪魔いたしました。よろしければ、ぜひ話だけでも聞いていただけないでしょうか。

栄爺:へぇ?! 蔵元さんが営業に宇宙にまで来てくれたなんて、初めてばい!! びっくりしたどぉ!(@_@;) ・・・で、減天、どうする?。
減天:ほんと、珍しかねぇ。・・・でも準備で忙しいっちゃけどねぇ(-"-)
栄爺:減天、まあいいやんか。

花田:実は当社が新たに開発しました、宇宙空間培養黒麹仕込みの『クロ桐山』をおすすめに参りました。これは宇宙空間で培養された黒麹を使用しまして、宇宙でのお湯割り吸飲に最適の味わいを醸しています。

栄爺:ほぉ、そげな麹があっとですか・・・。

花田:地球では圧倒的な人気を誇っているんですよ。特に宇宙酔いには最適で、無重力空間でも酔い覚め爽やかに楽しんでいただけます。現在では、日本の本格焼酎市場の50%以上を『クロ桐山』で占めてまして、全国の皆様にご愛飲いただいてます、ハイ。

減天:じゃがばってん。能書きは良かけん、どげな味か、実際に飲ませてもらわんと。

花田:どうぞ。ぜひ味わってみて下さい・・・。

(男、おもむろに変わった容器を取り出す。金属製の円筒形の容器からチューブが出ている)

減天:これは何ね?(・・;

花田:おお。さすがにお目が高い。これも当社がこの度開発した無重力空間用のお湯割り吸飲容器でして、燗付けも総て自動です。地上でも、これまでの販促ポット+お湯割りコップという組み合わせよりもダンゼン手軽で見栄えもいいと、若い層にも大好評なんですよ。

栄爺:これは面白かぁ!
減天:あんたはすぐ安請け合いするから・・・(-"-) でも、これって値段は高いと?

花田:いいえ! とんでもないです。大きな声では言えませんが、もし『クロ桐山』や他の銘柄も入れていただけるんでしたら、無償でケースで差し上げます。・・・拝見するところ、御店のキャパが80席ですか。でしたらそれ以上を。それと、無重力状態でも使える「桐山ロゴ入りスペース千代香」も合わせて・・・、いかがですか?

栄爺:うん、サービス良かねぇ! それは助かるばい! もう開店から8年、什器も古くなっちょるけんなぁ。
減天:また、あんたはすぐ安請け合いする・・・(-"-) でも、焼酎そのものが問題なんよ。ここは地上と違うけん、仕入れも大変やもん。 

花田:あの・・・。これも大きな声では言えませんが、もしよろしければ、まず宇宙用茶瓶で20本入りを、10ケース、無料で差し上げます。そのままキープとして出していただいても、お客様へのサービスとしていただいても、結構です。

減天:それだけ? じゃがばってん、問題は仕入れ値ったいねぇ(-ー; うちも値入れ稼がんとさぁ〜。ここは宇宙価格やけど、少しでも落としたいとよ。

花田:なるほど。またまた大きな声では言えませんが、他社の7×で結構です、ハイ。

栄爺:太っ腹やねぇ! じゃがばってん・・・、うちは味で選んでお客様におすすめする店やけんねぇ。・・・とにかく、飲んで決めよ。な、減天。

減天:いや。花田さん、おたくに決めた!!!  よっしゃぁ〜!!\(^0^)/
栄爺:(@_@;)

◇   ◇   ◇

(翌日、店は休み。二人はステーション内にあるスポーツ区画に、シニア搭乗員の運動会を見に行く。減天の義理の父・文八先生が出場している)

栄爺:おい、減天。お義父さん、あそこだぞ!
減天:あ!居った居った! ・・・・あれ? ねぇ、あれ、昨日の花田さんじゃない?

(運動会の本部席の中。浮かび上がるケースを手で押さえて、頭を下げる花田の姿)

花田:よろしかったら、打ち上げの時に、皆さんでお飲み下さい。どうぞどうぞ!(^_^)

◇   ◇   ◇

そして、その100年後・・・・・・・・・


       ♪どの星の店にも “桐”は瞬くぅ〜〜〜〜

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