2001.10.03 by 猛牛

本格焼酎の熟成におけるクラシック音楽の調べが与えるエフェクティブな成果とそのメカニカルなシステム構築について、斯界で最もコンダクター的な立場にあるのは、ご存知「田苑栗源酒造株式会社」。

ベートーベンと聞けば、御大Chuck Berry→Beatles→The Sonics→Mountainなどが奏した「Roll Over Beethoven」がすぐに思い出されてしまうわてにとっては、ちと縁遠いクラシカルな世界。しかしながら、『田園』の心地よい振動で美味い焼酎が出来上がるのは大歓迎なのら。

オフィシャルHPに「清酒、ワイン造りには音楽熟成を導入しているメーカーは数社ずつあるが、焼酎の熟成に関しては、『田苑はベートーベンの田園を聴いて・・・』のキャッチフレーズがマスコミの度重なる報道で利いているのか、追随する動きは今のところない」と書かれている通り、独自の道を進む同社である。

しかしながら「田苑栗源酒造株式会社」の独得の活動は、『音楽振動熟成システム』の構築に留まらず、意外にも販促お湯割りグラス製作の分野においてさえ異彩を放っていたのであった。

◇    ◇    ◇

前回取り上げた『さつま五代』のグラスと同じく、この『田苑』グラスでも極めて特徴的なのは目盛の部分である。

目盛の配分は「3:7、4:6、5:5」となっており、「6:4」という一般的に認知された“黄金律”はない。幾分濃いめのお湯割りをお勧めとしているのが、まず特徴のひとつ。

そして、さらにこのグラス最大の特徴は、「お湯割コップ」「湯:焼酎」という表記が目盛の左と上部にキッチリと印されているところであろう。実にわかりやすいのだ。

「ロックで飲むグラスではない。これはお湯割りグラスなのだ」と用途を明確にして、しかもお湯と焼

酎の区別を混合比の上にしっかりと明記している。「えーーとぉ、お湯が4やったっけ、焼酎が4やったっけ?(~Q~;)」というユーザーの無用な混乱を招来させない親切設計となっているのがスゴイ。素晴らしい配慮である。

◇    ◇    ◇

この様な表記を、「饒舌すぎる(-ー;」とか「デザイン的に収まりが悪い(-.-)y-゜゜゜」などと評するのは簡単であろう。

がしかし、この丁寧極まりない表記に脈打つ親切心とは、つまり「ユニバーサルデザインお湯割りグラス」と讃えられるべきものであって、決して健常者・焼酎知識人の立場から見たデザイン性のみで云々しては、このグラスの真の価値を見誤るものだと思う次第ぬぅあんである。

和歌山大学の山岡俊樹氏は『ユニバーサルデザインの設計手法の構築』の中で、ユニバーサルデザインを考慮するための設計項目案として、「身体面(手)におけるフィット性」、「ワンアクション操作(片手で計量可能)」「効果的情報伝達(見やすい)」といった項目をあげておられる。

このグラスの場合は、グラスを手に取った場合のフィット性もさることながら、一目でお湯と焼酎の割合を見極められてアレコレ悩む必要がないワンアクション性、効率的情報伝達がなされている点が、しっかりと押さえられている。

「ユニバーサルデザインお湯割りグラス」としてのクォリティをしっかりと満たした逸品とわては評価したい。

◇    ◇    ◇

思えば、ベートーベンは難聴でありながらも数々の名曲を遺したが、そのベートーベンの楽曲によって焼酎の熟成を行っている同社には、グラス一つにしてもバリアフリー〜ユニバーサルデザイン的な思想が脈打っているように思ふ。

それは焼酎を楽しむ上での垣根を取り払おうとする心配りであり、このグラスの表記にもその眼差しがひしひしと感じられてならないんである。


九州焼酎探検隊TOP