2000.11.03 by 猛牛

■問題です。
左右に分かれた下記の言葉、これは「○○の△△」という風に“の”で結び付けられる本格焼酎のネーミングです。左右の言葉を正しい組み合わせになるように線で結びなさい。
○○

百年
500年
千夜
千年
野うさぎ

天使
銀座
至福
香吟
赤とんぼ



薩摩

那由多
縄文
弥生
 

△△


走り

超越
誘惑
ロマン
すずめ
陶酔
しずく
かくし酒
ささやき

神話
孤独
師魂
大地


夢 


■全問正解、できたかにゃ?(^_^;)

さて、この原稿を書いているわてでさえ、一旦左右をばらしたら、ちょっと判らなくなってしまったのであります^^;。ほんと紛らわしいのよねぇ。

でも、「の」を接着剤にしたネーミングはとっても便利である。ちょっとお遊びで組み合わせてみると、たとえば・・・

●野うさぎの師魂
●赤とんぼの孤独
●金のささやき
●縄文の誘惑
●百年のすずめ
●弥生のかくし酒
●薩摩の神話
●銀座の大地
●至福の走り

とまぁ、なんともそれらしい商品名ができあがるから、不思議ですばいね。極めて効率的な手法である、と言えるとですたい(爆)。

たとえば『野うさぎの師魂』だと。切り株の前で“待ちぼぉーけ”しているアホなおやぢを木陰から斜に見ながら、「人生ちゃ、そげん甘くなかばい(-ー;」と説教でも垂れそうな練達うさぎの姿が見えてきたりとか。

『赤とんぼの孤独』の場合は、短い命にふと人生の無常を想う思索的とんぼの姿に、日々の憂鬱を忘れるために杯を傾ける己が投影されたりとか。(ものも言いようだね)

でも、一本格焼酎党のわてとしては、味そのものの評価は別として、そういう作為的な、ペダンティックさが漂うネーミングがどーーーーも肌に合わないんですにゃ、こと本格焼酎に関しては。

個人的には『蔵の師魂』なんかとてもいいネーミングだと思うんだけど、“漢字2文字++漢字2文字”というパターン化が見えるものはどうもイヤだなぁ〜と思うわけであります。

伊佐美、伊佐錦、白波、繊月、二階堂、霧島、雲海、紫美、桜島、壱岐・・・。わてが個人的に好きなのは、こういう名前ですばいね。風土と歴史と生活が彷彿として浮かんでくるような。

■『百年の孤独』症候群

もちろん冒頭の問題で紹介したブランドすべてではないのだが、これら「のネーミング」商品群が輩出したことついては、あの『百年の孤独』の影響が大きいのは間違いない。ほんと“孤独”以来、似たような名前がぎょうさん出てきたったいねぇ。

さて、それらの商品群の主立った共通点といえば、

1)思わせぶりな文学的ネーミング。
2)こだわり・デザイン性重視のボトル&ラベルデザイン
3)色物、長期貯蔵系

といったところだろうか。別に中身が美味ければいいじゃん!って言われそうだが、どうにも違和感を感じるのである。それらの商品群には「マーケティングにより生み出された焼酎達」という出生の秘密が背後にちらつくのら。

つまり地元で代々愛されてきた一升瓶(またはふつーの5合瓶)+泥臭いラベル+泥臭い味とはおさらばして、東国=大消費地でのウケを狙って“工作”された商品というイメージが、そのボトルの向こうに見え隠れするのである。

わては見逃したのだが、数日前知人が関東での本格焼酎人気を伝えるテレビのニュースを見たそうだ。焼酎バーが出来たりなんたりという話だったそうだが、やはり綺麗なボトルが受けた要因と解説していたという。

■『地名改変』の如く、ネイティブは滅びゆくか。

このネーミングのことを頭に浮かべていたら、ふと思いだしたのが『地名改変』のこと。つまり古い町名を変更して新しい町名番地を振るお役所仕事のことである。

地名とは、その土地の地形や歴史、出来事が封印されたひとつの“タイムカプセル”とも言える。それが改変されると、たとえば“安達が原”という古い地名が突然“自由ヶ丘”なんて名前に変わったりするのら。

その土地が歩んできた風土や歴史とはまったく切り離された、無関係な作為的地名に置き換えられてしまうのであるが、これは単に地名だけのことなのだろうか。本格焼酎においてもこの『地名改変』のような事態がさらに進行するだろうし、それがとってもイヤやなぁ〜というのが、この一席の主旨。

ネイティブさを失うのは味だけではない、名前も重要なポイントではないだろうか、と思う次第であります。


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