2000.9.5 by 猛牛

■タクシーの運転手さんとの会話。

「好きな焼酎ですか? 『○波』なんですよ(^_^)v」
(フェイスマークは筆者が状況を再現するため加えた)

某日のこと。わては、ひょんな事から手に入った鹿児島の芋焼酎『源衛門』を持ってタクシーに乗り、筑前中心部よりまっしぐらに家に帰ろうとしたのである。その運転手さんが、一升瓶を後生大事に抱えていたわてを見て、焼酎の話が始まった。その時に運転手さんに「好きな焼酎は?」と聞いた時の、回答である。

さて、余談ではあるが、なぜタクシーに乗ってまで持って帰ろうとしたのか。なかなかこちらでは手に入らない焼酎であったが故に、電車やバスを乗り継ぐなどという危険なマネは出来なかったである。というのは・・・

昨年春、福岡・天神の警固神社で開かれた『伊佐錦を楽しむ会』でのこと。泥酔して、いや少し酔っていたかにゃ、ともあれ確信犯的に、飲み放題食べ放題で会費2000円という超お値打ちであるにも関わらず、わては『黒伊佐錦』の一升瓶を懐に隠して会場を抜け出し、「にゃ〜(*^0^*)」とほくそ笑みながら瓶を片手に中洲の橋の上を歩いていたのである。

しかし・・・。酔って力の抜けていた腕から一升瓶が抜け落ち破裂。『黒伊佐錦』は中洲の露と消えてコンクリート製の橋がしっかりと飲んでしまったのである。泣いたじょぉ、もぉ〜(悪いことは出来ぬわいのぉ〜(T_T))

これがトラウマとなり、それ以来わては一升瓶運搬には細心の注意を払うこととなったのだ。今回の話は「百圓酒家」ネタと違って、カワイイちゃんねーの姿がないのが申し訳なしm(_ _)m(ま、どっちにしろセコイ話だにゃ〜)。

閑話休題。さて、冒頭の運転手さんと話していたら、“本格焼酎ビギナー”のトライアルと定着化の一例がとてもよくわかって、興味深かったのだ。

運転手さんのプロフィールはこうである。

●性別年齢:男性、60歳前後
●家族構成:妻+成人した息子二人(独立)
●焼酎歴 :2年
●愛飲銘柄:『さつま○波』
●本格焼酎以前の飲酒形態:日本酒+ビール
●本格焼酎摂取のきっかけ:友人宅の飲み会で何の気
なしに
●それまでの本格焼酎へのイメージ:臭う、安い


■何気なしに飲んだ焼酎が、美味かった・・・。

運転手さんとの会話でわても納得したのが、「何気なく飲んだ芋焼酎が美味くて、それ以来芋ばっかりですよ」という運転手さんの話である。

かく言うわてもそうで、相方の話によると、15年ほど前には芋は臭いからとソバや麦ばかり飲んでいたそうだ。いまは「芋が美味い!」などとエラソーにほざいているわても、かつては芋を敬遠していたと聞いて、まっ青になってしまったのである(苦笑)。

「いやぁ〜、前は日本酒とかビールばっか飲みよったとですたい。そしたら、友達ん家やったか、『○波』飲ませてもろうたら、それが美味くてですな〜^^」

「飲んでも寝覚めがよかですな、焼酎は・・・。そうそう日本酒は○ョンベンがですな〜、ちと臭いますけんねぇ(*^^*)」(猛牛爆)

という運転手さんの話に相槌を打ちながら、わても芋の初手は4〜5年前に「○波・明治の正中」であったことを思いだした。自分で買ったのかもらったのかは忘れたが、とにかく飲んで美味いと思った。そして芋しか飲まなくなったのは2年前筑前にやってきて『黒伊佐錦』に遭遇してからである。

だから、あえて運転手さんに「○波」を否定するような言葉は吐かなかった。

わて自身は、自ら進んで「○波」を飲もうとは今思わない。しかし芋焼酎に馴染んでもらう初手は、本場鹿児島県外では“味が落ちた、味が違う”と言われる「○波」でも十分であると思う。つまり、「芋焼酎」というカテゴリーに対してトライアルしてもらえるなら、“一般焼酎”でもいいじゃないか、と。

この運転手さんに最初に、芋の強烈な(ファンからすると甘くて堪らない)香りがする焼酎を飲ませたとしたら、さて、芋焼酎ファンの一員に加わってくれたかどうか・・・


■常圧と減圧の狭間に・・・。

国税庁醸造研究所のサイトに第23回本格焼酎鑑評会の結果がアップされている。従来の常圧蒸留よりも流行りの減圧蒸留による出品が増加しているという傾向が報告されている。

ここでちと説明。これは関東方面隊の、科学者であるJAZZ翁隊員よりわかりやすく教えていただいたのであるが。

気圧をさげると、沸点が低くなる。そのため減圧して温めればたとえば摂氏20度くらいで蒸発を開始する。蒸留機の中の気圧を下げ、沸点が高く飛ばない成分を残しながら蒸留する。つまり沸点が高くて飛ばさない成分に本格焼酎の風味、悪く言えば臭いの元となるものが多く含まれるため、減圧だと臭いが少なくなるというわけですにゃ〜、簡単に言うと。

先の第23会鑑評会の結果は、常圧蒸留による素材の風味が生きたこれまでの造りから、減圧蒸留による臭いが少ない飲みやすさ重視の造りに大勢がシフトしているということ。クセが少ないほど飲んで貰える人が増えやすい、つまり“売りやすい造りに蔵元がナヨっている”と、ついわては単純に考えてしまったのだが・・・。

・・・・・・・・・・・・・・

先日、ある蔵元の方とこの蒸留法の件で話をする機会があった。

「常圧の方が簡単で手間がかからないんです。私でも出来ます。杜氏なんかいりません。単に蒸気を吹き当てて留液とるだけです。まぁ、これは極論ですけどね^^;」

「減圧蒸留は単に減圧すれば軽い焼酎ができるというと、そうではないんです。杜氏の技術が試される蒸留法こそ減圧蒸留なんですよ

「単に圧力を下げるだけでつくれば、甲類に似た焼酎ができるのは間違いありません。しかし、蒸留する間、杜氏が付ききりで4時間温度計と圧力計とにらめっこした減圧焼酎まで否定される気がして、気が気ではないんですね」

「そこには長年培った杜氏の観が反映され、蒸留如何で味に深みも出れば香りに奥行きのある焼酎の誕生秘話が存在します」

・・・・・・・・・・・・・・

わての様な飲むだけの者には伺い知れない、まさに専門家の世界である。せっかく杜氏が丹誠込めて造った一升瓶の焼酎を落として破裂させるような、いぢ汚いトーシロの酒飲みには、エラソに語れない領域だ。

確かにどっちが正統なのかという論議はある。しかし、飲むサイドとして、わてはあのタクシーの運転手さんの気持ちが最も原点で、一番大切であると考えている。

何気なく飲んで、その焼酎が自分にとって美味いか、不味いか、好きか、嫌いか。そして、どこがどう良いのか、どこがいやなのか・・・


九州焼酎探検隊TOP