2000.10.06 by 猛牛

東京支隊・めーで隊員より、筑前にもたらされたひとつの新聞広告。
10月1日、まさに「10・1事件」とも言うべき本格焼酎増税の日に、
甲類焼酎陣営から発せられた“あやかしの矢”である。
見開き30段4色カラーのぜ〜〜〜たくなサイズ・仕様に潜む
いめ〜〜〜じ操作の実体に迫ってみる。
(ぬぅあんとも、社会派風ぅ〜)
■きれいな焼酎ぅ? なら本格(乙類)焼酎は「ブスな焼酎」かえ?

マルチで居並ぶ焼酎のボトルをバックに、あの石田ひかりちゃんが可愛い笑顔でほほえむ、この広告。「甲乙ってなに?」という人々に対しての影響を考えると、けっして無視し得ぬ作品である。

さて、紙面に刻まれたヘッドコピーおよびショルダーを大きさの順にご覧いただきたい。

「きれいな焼酎=甲類焼酎」
「そうとは知らずに、飲んでいました。」
「甲と乙、焼酎には2種類あったなんて」

「きれいな」という位置付けは、その反語として“汚い”存在を暗に示している。「きれいな焼酎」という記号が甲類焼酎そのものを表現しながらも、同時に焼酎には「汚い」ものもあるというイメージを想起させるところが秀逸(拍手)。甲類焼酎と本格(乙類)焼酎の違いがわからない人(ほとんどの方はそうであろう)に対して、簡潔でいて実に効果的な作用を及ぼす文言だ。

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次が「そうとは知らずに、飲んでいました。」・・・これは2つの意味を持つ。甲類焼酎を飲んでいる人と、なんとはなしに本格(乙類)焼酎を飲んでいる人、それぞれに対してである。たとえばこの二人がコピーを全部読んだとして、最終的な受け取り方はこうなる。

甲類焼酎を飲んでいる人=「そうとは知らずに、飲んでいました。乙類って汚いんですね。不純物が入ってて。きれいな甲類焼酎を飲んでいてよかったぁ(^_^)v」

■本格焼酎を飲んでいる人=「そうとは知らず、に飲んでいました。私が飲んでいた乙類は不純物が入って汚いんだ。・・・きれいな甲類焼酎に替えよう(@_@;)」

もちろん“確信犯的”に本格焼酎を飲んでいる人が「はい、そーですか」と誘導されはしない(爆)。しかし多少誇張を交えたが、大筋このような心理に陥ることを期待して、このコピーが配されているのは間違いない。なぜなら次の文言が「キキメ」となるからである。

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「甲と乙、焼酎には2種類あったなんて」、これである。

普通なら「甲と乙、焼酎には2種類あったなんて、そうとは知らずに、飲んでいました。」となるところ。それをあえて逆転させて、紙面の上部に「そうとは知らずに、飲んでいました。」、ひかりちゃんの“きれいな”お膝あたりにやや小さく「甲と乙、焼酎には2種類あったなんて」とレイアウトしているのが、またしても“あやかしの技”なのである(また拍手)。

ヘッドコピーから読み進めば進むほど、甲類焼酎の術中にはまる蟻地獄的作品と言える。

ここに、乙類焼酎と強制的に名前を押しつけられたが故に、「本格焼酎」と自ら宣言した蔵元たちの理由がある。“甲の方が乙よりも上等”という社会的通念をここで想起させて、「甲=きれい(乙=汚い)」というイメージ操作を行っているのだから。

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そしてビジュアルだけど、石田ひかりちゃん。

「その瞳の綺麗さにまた感動!! やっぱりひかり嬢って綺麗ですよね!!」

これはひかりちゃんのファン・サイトのBBSにあった、或るファンのコメント。ひかりちゃんの「綺麗」を甲類焼酎の「きれい」にオーバーラップさせて、甲類焼酎のイメージアップを狙っているのだろう。ひかりちゃんはわても大好きだが・・・

「本格焼酎が、ブスな焼酎で、どこが悪い!(-"-)」なんてね。


■「ものも言いよう(@_@;)」のボディコピー。

さて、最後まで読ませて“納得”させる、のボディコピーだが・・・。

(以下、引用)

おいしさに、クセがない。
甲類焼酎はきれいな焼酎です。蒸留に蒸留をかさね、ていねいに磨きぬいたピュアなお酒。不純物を含まず、原料のもつクセやにおいをなくした、透明で純粋な焼酎です。澄んだおいしさだけがそこにあります。

純粋で、邪魔しない。
混じりけのない甲類焼酎は、いろいろな飲みものとミックスして楽しめます。炭酸の爽やかさや果汁の香りをじゃませず、自由な飲み方ができます。素材をひきたてるから、果実酒づくりにも欠かせません。

さわやかで、のこらない。
磨きに磨いて、澄みきった甲類焼酎は、その純粋さゆえに飲みごこち爽やか。不純物がないから、悪酔いや二日酔いにもなりにくいのです。軽やかに酔えて、翌日は体にお酒が残らない。酔い覚めもスッキリです。

(引用終わり)

蒸留に蒸留を重ねて、純粋=単なるアルコールに近い甲類焼酎。「きれい」というヘッドコピーを受け、不純物を含まないとアピールすることで、なにか“衛生的にも安心できる焼酎”みたいな誤解を期待している(みたい)。純粋さ、ピュアさ・・・これは甲類焼酎陣営の常套句とはいえ、ミソであろう。

“不純物=香り、味わいの成分”が含まれることは、焼酎にとって決して悪ではない。“不純物”という言葉のあやかしの術が心理的に与える影響はデカイと言えよう。

次に「純粋で、邪魔しない」というのは、その通りで異論は無か(なぜかここだけ博多弁)。なぜなら甲類焼酎と本格焼酎は基本的に味わい方が違うのである。甲類焼酎は何かで割らないと、とてもそのままでは飲めない(少なくともわては)。がしかし、基本的には本格焼酎は焼酎そのものの味、香りを楽しむものだ。特に九州の焼酎は。

どだい土俵が違うのだが、そこが「そうとは知らずに、飲んでい」た人には効くメッセージとなる。

さて本格焼酎との比較上、最大の“うちょ”・・・「さわやかで、のこらない。」

本格焼酎党ならご経験のとおり、“不純物がある本格焼酎でも悪酔いしにくい”のだ。個人の体質、また酒量にもよるが、けっこうヘロヘロになった晩でも、翌朝頭がぐわぁん!ぐわぁん!と早鐘状態になったことは、まったくと言っていいほど、ない。「不純物がないから、悪酔いや二日酔いにもなりにくい」とは、あやかしの術の最たるものだろう。

というわけで、さっぱり納得できなかったわてであった(^_^;)


■「そうとは知らずに、読んでい」た方に・・・。

甲類焼酎が好きな方はそれを飲めばいいことだし、人の好みにとやかくイチャモンつけるのが本稿の主旨ではない。甲類焼酎を飲んで「うまい!」と思った人、本格焼酎を飲んで同様に思った人も、それは等価であって、要は個人の嗜好の問題。

ただ、マスメディアを使ってのイメージ操作、情報のすり替えが行われていることに、本格焼酎党としてはちょいとムカつくのである。それもこの広告、本格焼酎党・嘆きの日となった増税当日10月1日付の掲載なのら。

神経逆なでしたら、いかんって。飲み物の恨みはコワイのだ(爆)

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甲類焼酎ユーザーへ“確たる信仰”を与えると同時に、増税によって本格焼酎人気に冷水が浴びせられることを見越して、「そうとは知らず飲んでい」た本格焼酎ユーザーを甲類焼酎へと掬い取ろう、というこの広告の狙い。

さて、これが功を奏すのか、本格焼酎党はその成り行きに注目している。


■追記/この広告については、『あさから、ひるね蔵』主宰の秘剣氏が、「本格焼酎 甲類への反撃」という本格焼酎陣営の新聞広告についての評価を交えた激烈なる一文を寄せられている。必読!

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