2001.03.29 by 猛牛

■これは「本格焼酎プリミティブ・アートの傑作」、である。

アフリカ美術の影響を受けたピカソが、あの有名な『アヴィニヨンの娘たち』を代表とする土俗的臭気ぷんぷんの画風に染まっていた頃があった。それは彼の長い活動歴の中でも大きなターニング・ポイントともなり、また周囲にも多大な影響を与えたんである。

その意味をエラソに考えるなら、いまで言えば“第三世界”の美意識を取り入れて、それまでの西欧的伝統の重圧を払い活性化・進化を図った、と言えようか。

思えば20世紀とは、美術にしろ音楽にしろ、いや、人ひとりの生き方そのものでさえ「西欧的価値観からの離脱・超克、そしてそれを通じての再生」という大きなテーマを抱えた時代であったと思ふ。

ピカソがアフリカン・プリミティブ・アートに初めて触れたとき、素朴な生活から醸し出された表現ゆえのシンプルな美しさに、硬直化した西欧にはない、“第三世界”の自由闊達な精神の躍動、表現の原点を彼は見いだしたのではなかろうか。

◇   ◇   ◇

というわけで、格調高いマクラに続いて今回ご紹介するのは、鹿児島県大島郡にある朝日酒造さんの『朝日』の段ボール箱である。『朝日』は、あの独特のぷぅ〜〜〜〜んと来る甘みがなんともメチャ美味な黒糖焼酎なのであるが、この輸送用の段ボール箱も南国らしいネイティブなパワー、感性が横溢している。

朝日という名前そのままに、バックに赤一色で刷り込まれた太陽。極めて単純化された表現であるがゆえに、土着的な力強さで見る者を圧倒してしまう。有無を言わせぬ迫力である。

その太陽にドン!と載せられた「朝日」の書体も、西欧化を意識しすぎた銘柄ではほとんど見られなくなった、まさに“原点”を感じさせる純朴で鮮やかな筆致。

わてにとってこの作品は、「これこそが、本格焼酎の箱ったい(うんうん)」と納得させられる、そんな美的迫力でズンズンと眼前に肉薄してくるのだ。

◇   ◇   ◇

さて、この強暴なまでのプリミティブさの淵源は、やはり「太陽」をモチーフに選んだことにあるだろう。古今東西の文明が発祥したおり、多くの場合まず信仰の対象となったのが太陽であり、太陽神として崇められ象徴化されてきている。日輪は、人の心に働きかける最も古典的なシンボルなのである。

赤一色の単純化された表現が、人間の歴史と共に永く育まれてきた「太陽」への畏敬をその潜在意識から甦らせ、現代では失われた始原の情動を呼び起こしてくれるかのようだ。

というわけで、この段ボール箱は、まさに「本格焼酎プリミティブ・アートの傑作」として称賛されるべき作品なのである。


九州焼酎探検隊TOP