練物軍事シミュレーション小説
ちくわぶ関東軍『九州侵攻作戦』
作+挿し絵:じみ


九州にちくわぶ消費傀儡国家
『ちくわぶ國』建国を狙うちくわぶ関東軍
その謀略を阻止せんとする
九州牛筋人民解放軍
その熾烈な戦いが、いま始まろうとしていた・・・。


第一章 ネタ鍋の果てに

 20XX年秋。東京・赤坂のとある料亭で、その後の九州の運命を左右する重大な宴席が始まろうとしていた。出席者は、

 ・総理大臣 竹輪健一
 ・国防大臣 濃口半片太
 ・拮抗泉醤油社長 野田秀臣

の3人に、もう一人の予定である。彼らは日本国内ほとんどの地域の味覚を“平和的”に統一することに成功していた。しかし頑強に抵抗するある島を今後どう攻めるかについて、頭を悩ませていたのだ。
 ・・・それは九州だった

 クマソ・ハヤトの昔から、中央国家に対して反旗を翻す「まつろわぬ」伝統が息づいている九州人だったが、政府の味覚の統一化に対しては特に激しい抵抗の機運が高まっていた。関東製醤油の不買から始まった民族自決の運動は、政府の『ちくわぶ的食物を主食とする日常食生活改革法案』議会提出で、まさに“火に油”状態となっていたのである。

 地下武装組織によりテレビ局が占拠され、『こげなもん食えるかぁぁぁ!』というスローガンを1時間を叫び続けるという事件が起こるや、当初楽観視していた政府も、あまりの抵抗運動の激しさに武力解決に踏み切る決断をしようとしていた。・・・しかし武力とは表向きの話である。解決の影には“経済”が蠢いていたのである。

野田 「まぁ、首相、一杯ぃ・・・」
竹輪 「鷹葦は?今日は遅いのぉ」
野田 「・・・それで首相、九州侵攻作戦ですが、準備の方は?」
竹輪 「まぁ、そう慌てやんな。あんな小島、5日もあれば落ちるばい。のぉ、濃口」
濃口 「は。わがちくわぶ関東軍には、岩国基地および小月基地にステルスちくわぶ爆撃機CB-118が500機、玄界灘、豊後水道、屋久島沖に原子力ちくわぶ潜水艦・こいしお級が20隻待機しており、ちくわぶ弾頭搭載ミサイルをいつでも発射できます。」
野田 「ほほぉ〜、それは心強い!・・・これで九州も我々のものですなぁ〜。がははははは!」
竹輪 「そうなりゃくさ、お前んとこも“○大豆”の生産が間に合わんやろう。なは。」
濃口 「ところで・・・この刺身、美味いですなぁ〜」
野田 「刺身というか、私どもの醤油が旨いのでは?毎度ありがとうございますm(_ _)m」
竹輪 「いや、そりゃ九州の不次尽醤油たい。わしが女将に言うて取り寄せたと。旨いはずたい。でへへへへ!」
野田 「おろ・・・(-ー;」
竹輪 「九州を押さりゃ、市場はお前のもんたい。そうガッカリしやんな。」

 さて、宴席は続いていたが、肝心のもう一人がなかなか現れなかった。それとは誰あろう、おでんダネの製造では日本を代表する「奇分」財閥の総帥・鷹葦鍋之新である。

 鷹葦は野田と共に中央政府の日常食生活支配を支援し、九州を植民地としてそこから莫大な利益を吸い取ろうとしていたのだ。そしてその先兵として送り込まれようとしてるのが、鷹葦が陣頭指揮を執って製作された秘密兵器「ちくわぶ」であった。

 議会での立法化という“平和的”手段では解決されそうにない九州紛争に業を煮やした鷹葦が今夜の宴席を設けたのだが、当の本人が現れない。3人は時計の針を気にしながら、運ばれてきたおでんのネタ鍋をつつき始めた。鍋一面にちくわぶだけが湧いたかのように所狭しと浮かんでいる。その鍋は、まさに彼らにとって、果てしない欲望の泉だった。

 法案では“ちくわぶ的”という表現で誤魔化そうとしたが、しかし九州人にとってはあくまでも「ちくわぶはちくわぶ」である。政治と経済と法の欺瞞、対して日常の拠り所を守りたいと願う庶民のささやかな願い・・・その二つがいま真っ正面から激突しようとしていたのである。


(続く)



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